【22.04.25】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.106)「すぐに、HOWに行かない」

image/220425-101631-278747504_5109145225829890_7161089598418377920_n.jpg


4月16日から、第11回「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座(PHM)」が始まりました。北は北海道・紋別、南は沖縄・那覇から精鋭が集いました。

PHMでは、冒頭<DAY1>で、「ロジカルシンキング」というセッションを行ないます。論理思考の訓練です。今後、人材マネジメント、マーケティング、会計・財務といったテーマが続きますが、すべてをこの論理思考で捉え、議論していくためです。

ロジカルシンキングとは、右脳ではなく左脳を働かせるということです。これまで右脳(勘と経験)で判断してきた人が、左脳(論理思考)で判断することは、右利きの人が左手で箸を使うくらい大変なことだと思います。だから訓練が必要です。

私も、学生時代はバックパッカーが長かったので、瞬間的に右脳で物事を判断するくせが付いてしまいました。ブルースリー(「Don't think! Feel.(考えるな!感じろ)」)ではないですが、論理思考、戦略思考ができなくて、その場その場で勘と経験と度胸で世の中を渡ってきた。

ホテルパーソンも、瞬間的に判断して、目の前のお客さまに対応する仕事なので、右脳が発達し、その結果、左脳が発達しないということが起こるのだと思います。しかし、サービスマンは百歩譲ってそれで問題ないかもしれませんが、経営者やマネジャーは、物事を論理的にとらえ、判断していくスキルが大事です。

ロジカルシンキング(論理思考)の大前提は、「<問い>から考える」です。「<正解>を導き出す」まえに、熟考を重ねて適切な<問い>を設定することです。この<問い>の設定が間違っていたら、当然、その<解>も間違います。間違った打ち手を打つ結果になる。



image/220425-101631-1234.jpg



宿屋大学では、その思考を「<WHAT>⇒<WHERE>⇒<WHY>⇒<HOW>」のステップ(フレームワーク)で訓練します。

<WHAT>は「適切な問い(イシュー)」であり、<HOW>は「打ち手(解)」です。適切な問いを立て、<WHERE>で、どこに問題があるのかという分析をざっくりと行ない、<WHY>で、原因の究明をします。<HOW>を導き出すのは、最後の最後です。

ただ、右脳が長けている方、現場経験が豊富な方は、どうしても<HOW>をすぐに導き出して打ち手を売ってしまいがちです。

そういう私も、これに気づくのが遅くて、9年ほど前にグロービスというビジネススクールに通うまでは、本当に「HOW」から入っていました。18年間お世話になった出版社の社風や、私の師匠である作家の中谷彰宏さんの仕事の進め方が、「とにかく、やってみようよ、失敗したら止めればいいんだから」というものでしたので、私の仕事も、確度が不明でも、勘と経験で判断していけそうならGO!というスタンスでした。だから、論理思考は、ほとんどなかった。それを10年近くかけて、矯正してきました。


image/220425-101631-IMG_3593.jpg


弊社にも、いろんなホテル・旅館から、研修の依頼がきます。「CS度が低い。接客パーソンの接客技術が低いからだと思う。だから、高品質な接客技術を伝える研修をやってください」とか。でも、よく調べていくと、研修という能力開発(一人ひとりの能力を高める)が必要なのではなく、組織開発(一人ひとりの実力が発揮されない状態の組織を活性化する)や、もっと言うと人事制度や、職場環境に問題があったりします。実は、人間関係が悪くてコミュニケーションが円滑化されていない組織というのが、CS度が低い原因(WHERE)だったりということがある。

研修という打ち手は、HOWの手段のひとつ。ですので、宿屋大学では、研修を設計する前に、じっくり社内の問題を探ることから始めることを徹底しています。
「お腹が痛い」という患者に対し、「盲腸かもしれないから、お腹を切ってみましょう」という医者がいたら大変ですよね。処方箋を書くのは最後です。

「解・打ち手<HOW>」を導き出す前に、「問い<WHAT>」を考え抜く。「自分が考えるべきはなんだろか」「何を問わなければならないか」「いま議論すべきはなにか」という「適切な問いを立てる」をアクションを起こす前に行なう。これだけでも、あなたのビジネスの仕方は大きく変わります。

ぜひ、実践されてみてください。


ページトップ