【21.01.01】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.97)「コロナ禍をリフレーミングする 〜2021年の新年のご挨拶に変えて」



新年明けましておめでとうございます。
不安が募る毎日。感染拡大が続きながらの年明けとなりました。

2020年、ホテル・旅館業界に特化したビジネススクール・研修会社である宿屋大学も、業界の皆様と同じくハードな一年となりました。看板講座である「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」も受講生のキャンセルが相次ぎ、受託している様々な研修も中止になりました。売り上げ激減です。宿屋大学を含めた観光・宿泊産業が受けているコロナ禍の負の影響は絶大であることは間違いないでしょう。

しかし、自分の力ではどうすることもできないことを嘆いていてもしょうがありません。みなさんは、「リフレーミング」をご存知ですか。リフレーミングとは、ある出来事や物事を、今の見方とは違った見方をすることで、それらの意味を変化させて、抱いている感情やイメージを変えることです。たとえば、臆病な性格の部下A君に対して、「度胸がない、意気地がない」とネガティブに判断してしまうこともできますが、そこを「慎重派、確実に失敗なく仕事をこなせるタイプ」と捉えれば、A君をポジティブに見ることができます。物事の捉え方の技法、良好な人間関係の構築法として、ホテルグリーンコアの金子祐子社長は、コロナ禍になる前から、このリフレーミングを提唱しています。

このリフレーミングで、コロナ禍を捉えてみると、私にとっては、多くのメリットがあることに気付きます。例えば……

●読書と思考の時間が増えた
●お金を使ったり、モノを消費しなくても喜びや楽しみを創り出す方法をいくつも見出せた
●家族や仲間の大切さを強く感じるようになった
●オンラインによって会議やセミナー開催が効率的にできるようになった
●交通費の圧縮ができた
●どこででも仕事や講義ができるため出張しやすくなった
●ワーケーションという新しいライフスタイルを発見できた
●オンラインセミナーによって、日本国中、世界中どこからでも受講ができるため、商圏が広がった
●世界中の講師に講義を依頼することができるようになった

宿泊業界の皆様はいかがでしょうか。このリフレーミングで考えると、コロナ禍にも、メリットや恩恵がは見出せませんか。例えば、「人が足りなくて、ブラック職場に陥っていたが、解消され、スタッフに休暇を与えられた」とか、「近視眼的な経営・運営になりがちだったところ、ポストコロナを見据えて中長期の経営戦略を立てることができた」「研修の時間が取れた」といったことはありませんでしたか。




地球の悲鳴の“聞こえないふり”は、これ以上許されない



科学的根拠のない説ですが、私はこの「新型コロナウイルス感染症の拡大」という禍(わざわい)は、人類に対して「自分たちの繁栄ばかり考えやがって、いい加減、自然破壊をやめなさい。地球はあんたらのためだけにあるんじゃない!」という暗示ではないかと思えてなりません。コロナ禍は、「経済成長や企業売上や給与の増大というモノサシの代わりの、幸せを測るモノサシ(価値基準)を見つけてなくてはならないタイミング」が来ているという、怒りを込めた神様のお告げなのではないでしょうか。その模索には、資本主義の在り方を見直す必要がありますが(地球という環境が無限であるならば、無限の欲求を持つ資本主義は成立しますが、地球は有限なので、経済成長や売上至上主義の経営の在り方を改めて「成長ではなく定常」を目指すべきという論です。『人新世の「資本論」』というベストセラーに詳しく書かれています)。企業の成長や売上向上を目指して生産力を限りなく高めるために「人々が欲するならいくらでも生産して、ばんばん売っちゃえ!」とするではなく、不必要なものは作らず(食べられないで捨てられる食品や、着られることのないアパレルなど)、人々の基本ニーズを満たすことを重視する生産活動、経済活動にシフトしないと、資本主義が終わる前に地球は終わってしまうのです。といっても、資本主義の恩恵を存分に受けてきた我々西側の先進国の人々は、きっと変われない。そう思って神様は新型コロナをばらまいたにちがいない。リフレーミングせずとも、私にはそう思えてならないのです。地球が発する悲鳴に対して、これ以上、聴こえないふりは許さないという神様の怒りです。

ホテル業界に対しても、本音を言わせていただければ、違和感を覚えることはいくつかあります。「新規のホテル建設は本当に必要なのだろうか、リノベーションではだめなのだろうか」とか、「ツインのシングルユースなどで、宿泊者は明らかに使わなかったリネンやタオルの交換は、本当に必要なのだろうか」「廃棄されるだけの残飯を減らす取り組みは、真剣にされているだろうか」などです。欧州などでは、SDGsの取り組みをしていないホテルは顧客から敬遠されると聞きますが、日本は本当に遅れていると思います。




仕事に上限を定める



「成長ではなく定常」。この考え方で仕事や生活を見直し、理想のライフスタイルを実現することができたら素晴らしいと思います。「佰食屋(ひゃくしょくや)」をご存知でしょうか。京都にある食堂で、ランチ営業のみ、一日100食しか売らず、完売次第営業を終了します。自分たちが必要な売上と利益が出れば、それ以上は働かない、生産しないというビジネスモデルを構築して成功しているのです。働く(アウトプットする)上限を決めておき、余った時間を使って豊かな生活を送るのです。むやみやたらに売り上げや利益を高めようとするから時間がなくなるのです。

これからの生き方、経営スタイルに、大いに参考になる事例だと思います。ただし、そのためには、品質と単価をある程度高めないといけないでしょう。「薄利多売」ではなく、「厚利小売」というビジネスの在り方が必要です。“貧乏暇なし”の働き方をして、自然環境破壊につながる大量生産大量消費ビジネスをするのではなく、 “足るを知る”生き方、仕事のスタイルをすることで、金銭的自由と時間的自由と精神的自由を獲得する。理想を言えば、お付き合いしたいお客さまを選んで、その方たちとだけ価値の共創をすることでビジネスと生活が成り立てば最高です。

令和3年、2021年は、そんな生き方ができる元年になればと思います。
本年も、宿屋大学をよろしくお願い申し上げます。

2021年元旦 宿屋大学 代表 近藤寛和

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