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【19.04.08】連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ」A
新連載「ホテルユニフォーム会計のトリセツ 〜元外資系ホテル・ファイナンシャルコントローラーによる非経理ホテルスタッフに贈る経理コラム」by 福永健司 の二回目です。
売上?収入?所得?売上にまつわる話
あなたはご自身のホテル、あるいは部門(ここでいう部門とは宿泊やレストラン、あるいは宴会のことです。またあなたが営業担当なら営業部門、人事なら人事部門のことです)の損益計算書(ある期間におけるホテルや部門の業績結果を見せる“一覧表”だとここでは思ってください)を見たことはありますか?
“ホテルはサービス業の王様”と言われた時期もあり、とかくホテルといえば「おもてなし」や「サービス」の優劣によって評価が決まると思われがちですが、ホテルもビジネスですので、「儲かった」、「儲からなかった」というビジネスとして当然の評価があります。
顧客満足度という指標はもちろん大事ですが、この一点のみに焦点を絞ると、極論「利益を無視してお客さまに尽くしなさい」ということになりかねません。ホテルの財務・経済的利益を追求しながら、ゲストにもホテルスタッフにも、オーナーや株主など、関係者すべてに満足していただくのは簡単ではありませんが、現実はこれらのバランスを取りながらホテルを運営することを求められています。
このバランスについてはこのコラムの後半で触れることになりますが、まずはホテルの経済的業績を測り、それを端的にステークホルダー(ここでは総支配人、部門長、スタッフ、ホテルオーナーを指します)に指し示す損益計算書という指標について紹介していきます。
「ホテルユニフォーム会計」ってなに?
今回のコラムの表題にもなっています“ホテルユニフォーム会計”とは、前述する損益計算書のことです。そして、より正しく表現するとしたら「部門別版の損益計算書」であり、このようにここではご理解下さい。
何度も申し上げますが、私は文系出身で、算数はもとより計算が嫌いで苦手です。難しい数値的な要素が羅列されているのを見るだけで嫌になります。ゆえに本コラムでは、順を追って、可能な限り容易に理解できる様に説明をしていきたいと思います。
早速ですが、「損益計算書を10秒で説明しなさい」と言われたとしたら、どう答えるか。
答えは、「売上−費用=利益」です。
売上が100で費用(経費)が70なら利益は30(100−70=30)。
これだけなのです。
売上、費用、利益には種類がある
数式は、ご覧いただいた通り、たんなる引き算ですので、怯むことなく理解ができると思います。悩ましいのは売上、費用、利益には種類があり、また数値も100や70といった単純なものではなく、桁表示が百万、千万、億はたまた兆になり、端数も存在することです。だから複雑に見えたりするのです。これを防ぐため、ここでは最初は便宜的に簡単な数値を用い、説明をしていきます。
個人が法人(会社)からもらう給与などを“収入”と呼び、収入から個人の税金を算出するにあたり一定の控除を受けた後の部分を“所得”と呼びます。“売上”とは商品やサービスなどの対価と定義づけられていますので今回取り扱っていくのは売上となります。
ホテルの売上とは何でしょう?
フルサービス型のホテルであれば宿泊売上、レストラン売上、宴会売上(一般宴会と婚礼売上に大別されることがある)、そしてホテル付属設備による売上(スパ、スポーツクラブ、売店、駐車場等)、あるいはテナント売上(ホテルの一部を外部に貸していることによる家賃売上)があり、宿泊特化型(ビジネスホテル)であれば基本、宿泊売上のみということになります。
売上の構成要素に注意
ホテルの2大売上は宿泊と料飲(レストラン+一般宴会+婚礼)ですが、これらの売上を構成する要素は、それぞれ平均客室単価と販売済み客室数と平均単価と入客数となり、これを算式にすると・・・
宿泊売上=宿泊平均単価(=Average Daily Rate(ADR))×販売済み客室数
となります。例としては10,000円のADRのホテルで10室販売できれば100,000円(10万円)の宿泊売上となります。
料飲売上=平均単価×入客数となります。
こちらは5,000円の平均単価で100名の入客あると500,000円(50万円)の料飲売上となります。
と大変シンプルな話です。
これもコラム後半にふれますがこのシンプルな計算式が営業・マーケティング的に考えますといろいろな意味を持ってきます。
(コラムA終わり)
【次回に向けてのクイズ】
過去、私(福永)が、財務会計担当者として関わったあるホテルで、非常にユニークな売上がありました。さて、どんな売上だったでしょうか?
そこは複合リゾートでコラム中にあった宿泊、料飲の他に付属設備があったのです。スパやジムなどはよく見ますがホテルとは直接関係ないのですが便宜的にホテル内の経理に取り込まれていました。さて、何の売上だったでしょうか? 私自身も見たのは後にも先にもここのリゾートホテルだけでした。
答えは次回のコラムにてお伝えします。ぜひ、次回もご覧ください。