【18.09.13】人材シリーズC「もしかして、あなたもブラック上司?!」 

インタビュー 株式会社 Indigo Blue 代表取締役会長 柴田励司氏


シリーズ「ホテルにおける超人材難時代の人の育て方」の四回目は、「ブラック上司」にフォーカスします。前回のパワハラ問題同様、「自分たちは正しいことをしている」との認識で部下と接していても、実は部下から見たら完全に「ブラック上司」の言動になっていることが多いのです。かつて京王プラザホテルでも働いたことのあるコンサルタント、株式会社 Indigo Blue の柴田励司代表取締役会長のインタビューと、柴田氏の近著である『もしかして、ブラック上司?』の内容をもとに、「ブラック上司にならないためのポイント」を紹介します。

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ブラック上司診断表


まずは、下記の問診票にお答えください。

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この「ブラック上司診断表」は、柴田氏の『もしかして、ブラック上司?』に紹介されているブラック上司病にかかっている症状の具体例をリストアップしたものです。半分以上に✓マークが入った人はご自身の「上司としての在り方」を問い直す必要がありそうです。

診断リストの多くに✓マークが入ってしまった人には、下記のような傾向がないでしょうか。

@上司と部下には上下関係があると考えている
A気遣いは上司にすべきで部下にはしなくていいと無意識に考えてしまっている
B自分の価値基準で部下を指導すべきだ
C苦労や理不尽を耐え抜いてこそ、成長がある
D価値基準や常識が変化し、また多様化していることに気付いていない

これらの考え方は、20年前のホテル業界では「当たり前」にまかり通っていて、この考え方で上手くいっていたのかもしれませんが、今では通用しません。世の中は変化しているし、価値基準も多様です。また、20年の世代間には大きなギャップがあるのです。

ブラック上司になってしまう人の傾向は、この「変化を無視している」ところです。



ホテル業界はガラパゴス化している可能性がある?!


では、このように、時代の変化に気付かず、時代から取り残されてしまっている人たちに、どうしたらそれを気付かせてあげられるのでしょうか。それを知りたいと思い、柴田会長をインタビューしました。

まずは、この現状をどうお感じになっていますか。

柴田 今回のブログ連載のお話をいただき、一連の内容を拝見しましたが、ホテル業界の実情は、私がホテルで働いていた30年近く前と、あまり変わっていないように感じました。チアリーディングや体操の話とか、アメフトの例とか、スポーツ界では、まだまだ根性論一辺倒で「汗と涙を流せ」的な指導がはびこっていますが、それと同じ環境でしょうね。

ブラック上司の典型的な症状のひとつに、「部下の時間を奪う」ということが挙げられます。

上司として決めなければいけないことも決めない。だから、部下はどうしていいかわからないために前に進めない、仕事ができないということがあります。これは、明らかにブラックです。部下の状況を確認しないで、自分の都合だけで部下を呼びつけたりすることなども、気付かぬうちにやっちゃっている人は多いと思いますが、これもブラック上司の症例には多いですね。または、会社が業務の効率化のためにペーパーレス化を進めようとしているのに、「昔から、この用紙を使ってやっていたのだから、うちはこのままこれでやる」と言いつつ、部下に二度手間を強いるなどの症例もよく聞きます。

ようは、部下を自分のしもべだと勘違いしているのでしょうか

こういう方々は、自分がこれまでされてきたことをそのまま部下にやっちゃっているのです。

また、ホテル業界とスポーツ業界の共通点は、「上下という意識が強い」ということです。

いま挙がった「部下の状況を判断しないで呼びつける」や「決めないために部下の時間を奪っている」といったことがブラック上司の事例になっていることは、まだ気付いていない人が多いと思いますが、一方で、下記のようなことにはみなさん、やってはいけないことと気付き始めています。

例えば、
「定時になっても帰らず、その時間になると仕事のギアを上げる」
「部下の休日中にメールをバンバン送る」
「目的を言わずに指示命令をする」
といったことです。

もし仮に、こうしたことがダメなことであることにホテル業界が気付いていないのならば、その理由は「よその業界や、今の世の中の変化を知らない」ということなのだと思います。よその業界は、業界をまたいで転職をすることも当たり前ですので、いろんな価値観が比較的入ってきやすい環境にあります。しかし、ホテル業界は、転職は頻繁に行われているとはいえ、ある程度上のレイヤーになると業界内だけで動いている人がほとんどで、よその業界からの人の流入が極めて少ないということ、つまり閉鎖的な業界であることが、進化を妨げ、ガラパゴス化してしまっている原因なのではないでしょうか。そこが大きな問題なのだと思います。

仕事をする上でのスキルを、私は3つに分けています。
下記の3つです。

●特定スキル・・・・・・特定の会社の、特定の仕事に必要なスキル
●ポータブルスキル・・・どこの会社に行っても、どんな仕事についても必要なスキル
●心の持ちよう・・・・・人間性

で、ホテルで働く方々は、このうちの「特定スキル」を磨くことばかりに熱心なようです。ポータブルスキルを磨く努力をあまりしない。この辺にも課題がありそうです。

そういう意味では、外部の研修講師による研修や、外部のビジネススクールに社員を通わせるということも、ホテル業界では非常に控えめなのではないでしょうか?




「人材こそホテルの資産」と言いつつ、その資産を磨こうとしない


確かに、ホテル企業は「ヒトこそホテルの資産・商品である」と言いつつ、人を磨くことにお金を使わない傾向にあると感じています。産労総合研究所というところの調査によると、1人当たりの教育研修費用(2016年度実績額)は平均37,177円だそうですが、ホテルの場合、1人当たりの教育研修費用は、その半分もないところがほとんどだと思います。



柴田 大前提として、人を大事にする企業でないと、これからはますます人は集まらないと思いますよ。「人の意見に耳を傾けない」「人間性の否定をする」といったブラック上司がいまだにのさばっている企業は、いずれ淘汰されるでしょう。スポーツ界やホテル業界の方々は、自分を客観視する機会や、違う業界の人と話をする異業種交流会といった機会がないのでしょうね。自分たちの常識は、世間の非常識になりつつあることを認識すべきでしょう。

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仕事以外のところでつながっているかどうか


ご著書の中に、「ブラック上司とホワイト上司は紙一重の違いだけれど、その違いは信頼関係の有無」というメッセージがありますが、信頼関係が築かれている組織とそうではない組織は、根本的に何が違うのでしょうか。


柴田 これは、昔も今も変わらないのですが、要は「仕事以外のところでもちゃんとつながっているかどうか」です。仕事の時間だけのお付き合いだけではなく、息子さんが熱を出して欠席された同僚に翌日「息子さん、良くなった? 大変でしたね」といった気遣いの言葉を掛けられるかとか、休みの日に同僚が集まってどこかに出かけるとか、つまり、仕事を離れたときに付き合いの濃度が、信頼関係に直結します。

あとは、「リーダーがニコニコしているか」ですね。危機感をあおりすぎたり、暗い顔を見せたりするのではなく、話しかけやすいリーダーがいるところは、健全な組織になっています。



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      『もしかしてブラック上司?』柴田 励司 (著)
        単行本(ソフトカバー): 224ページ
         出版社: ぱる出版 (2018/4/11)

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