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【15.01.20】新連載「ホテル総支配人の6つの力」 by 福永健司氏
第一回「情熱力」
一口に、「ホテル総支配人」と言っても、その役割はホテルの形態によってさまざまです。
フルサービス型であるかリミテッドサービス型なのか、あるいはその経営上の帰属先が親会社への連結対象なのかホールディング会社の一法人(事業体)としての単体としての存在なのか、そして契約形態は直営、業務委託あるいはリース契約なのかなどによって、考え方や優先事項、求められる内容が大なり小なり変わってきます。
このコラムではそうした内的・外的な要因をある程度省き、ホテルの総支配人に必要だと私が考える要素を「6つの力」として紹介したいと思います。私も講師を勤める宿屋大学の月一回の連載ブログとして全6回、半年間で語りたいと思います。
私が今回考えた「6つの力」は、これです。
情熱力、ビジネス力、適応力、体力、大局力、人間力。
本ブログでの紹介順は優先する順位とは関係ありません。また多くの諸先輩方、経験豊富な総支配人の皆様がいらっしゃるなかで甚だ僭越に感じますが、それでもホテルを愛し、ホテリエという職業に誇りを持ち将来、総支配人を目指す同志の方々に少しでも参考になれば望外の喜びです。
第一回は、「情熱力」です。
ホテル、その素晴らしくも特殊な世界を、リーダー(=総支配人)として牽引するには、まずポジティブであり、つねに情熱を持ち続けることが必要です。
ホテルを“特殊な世界”と称したのは、ホテルビジネスには宿命があるからです。ホテルは一度開業すると24時間365日、事業として休める暇なく、延々に営業し続けなければならないという宿命です。この世には多くの業種が存在しますが、こうしたユニークさは、ホテル(旅館含む)独特のものでしょう。
昨今のテクノロジーの進化によって、どこにいてもオンタイムで繋がる環境があれば、総支配人はオペレーションの現場に出向いていなくてもバーチャルな状況で遠隔操作できますから、24時間、365日ホテルの舞台で運営スタッフと共に「格闘」しているのと同じなのです。
総支配人に求められるのは、「ゲストへのサービス・ホスピタリティ提供への責任」、「スタッフのモチベーション向上への責任」、そして当然ではありますが「ホテルパフォーマンス(売上・利益)への責任」がついてまわります。さまざまなプレッシャーと、不測の事態のオンパレードのなか、それを力に変える情熱力が試されるのです。
表面的には煌びやかに見える世界こそ、それを支える裏側には多くの試練と矛盾を内包しているのです。「業績が振るわない」、「お客さまからお叱りを受ける」などなど、晴れの日ではなく雨の日が続くかもしれない状況下でも、あなたは、つねにポジティブでいて、チームに、部下に情熱を語れますか。100人の総支配人がいれば100人の違う意見があるとは思いますが、リーダーである以上、総支配人は孤独です。
しかし反面、自分の五感を駆使し、チームを奮い立たせ、結果を残す。苦労は多いけれど、その達成感は何物にも代えがたい充実感があります。
情熱力とは継続・持続性をもって貫けるかであり、それを醸成するのは自分のやりたいことをやることが原点です。
火事場の馬鹿力で瞬間的な力を発揮することができる人は大勢いると思いますが、持続して物事を履行・実行できる人は限られています。それが情熱力です。
総支配人は、雨の日も風の日も、成功したからといって必要以上に浮かれず、うまくいかない時も落ち込まず、淡々と継続的に情熱という名の火を点け続けるのです。想いを伝播させるセルフモチベーターである必要があるのです。
失敗したいと思う人はいないと思いますが、成功したい、勝ちたいと思うなら、願っているだけではしょうがありません。「努力は必ず報われる」ということは、残念ながら現実社会では極めて稀です。しかしながら、自分の目標を達成した人は、人知れず必ず何らかの努力をし続けているのは間違いのない事実です。やらないで失敗したら後悔だけが残りますが、やるだけやって駄目なら、ある意味、納得できるのです。
情熱を熱狂に変え、あなたも自分のやりたいことに挑戦してみませんか。
●福永健司氏のプロフィール