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【14.12.31】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.91)
私のホテリエ養成事業20年史
第三回「プロフェッショナルホテルマネジャー養成講座」受講生と関係者
大晦日です。
いまだ年賀状が終わらず、今年最後のブログ執筆と同時進行で行なっております。
さて、思い起こせば、5年前のこの日(2009年12月31日)、私は約18年間続けたサラリーマン生活の最終日を迎えていました。そして、5年経った今やっと「やりたいことがやれている実感」を得ることができたように思います。少し、自己満足的な内容ですが、自身の備忘録という意味でも書き記しておきたいと思います。
ホテルではなく、ホテル業界人が好き
第三回「PHM養成講座」最終プレゼン会
私は1991年の夏にアルバイトスタッフとしてオータパブリケイションズにお世話になり、翌年4月に正社員として入社しました。本を書店にセールスしたり、定期購読の管理をしたりする販売部という仕事を3年やり、ホテレス誌の編集や書籍編集をしながら、1996年に縁あって『ホテル業界就職ガイド』という新企画を提案し、出版しました。1997年版です。
これが、予想以上に売れたのです。会社の上層部からは「学生相手のビジネスなんて儲からない」といった批判がありましたが、その批判をよそに本は一万部近く売れ、就職セミナーや合同会社説明会をやれば大いに盛り上がり、「ホテル志望学生の就職支援」事業が一つの会社の柱になりました。気を良くした私は、毎年秋になると就職ガイドの編集に没頭し、就職活動シーズンである冬から春にかけては学生の就職指導に夢中になりました。教えることや後輩の指導といったことはそれほど好きなことではなかったのですが、ホテル志望の学生さんたちがみなものすごくいい子ばかりで、一生懸命なので、彼らといるのが楽しかったから、頑張って内定を得た喜びを共に味わいたかったからだけでやっていたのだと思います。そうやって、「一緒にこの業界を盛り上げていこうよ!」と、何百人もの学生の背中を押してホテル業界の仲間になってもらいました。
私はホテルが好きなのではなくて、ホテル業界人が好きなのです。
「ホテル業界をよくしていきたい」という共通の想い
ところが、そうした優秀でモチベーションも高い人たちが3年くらいするとまたオータパブリケイションズにやってきます。希望に燃えた就活中の目の輝きはありません。そしてこう言うのでした。
「ホテルの仕事はもういいです。○○という会社に転職します」
こんなことが続きました。どうも、劣悪な職場環境、厳しすぎる上下関係などが原因で、ホテルの仕事に幻滅し、挫折して去っていくようなのです。もちろん、ホテルの現場だけが悪いとは思いません。耐性の低い彼らにも問題があります。でも、いじめやパワハラが横行し、サービス残業が残る職場は間違いなくおかしい。
そんな、ホテル業界の理不尽や未熟なビジネス手法に疑問を感じる人が若手のなかに出てきました。当時はインターネット創世記で、メーリングリストなどが普及し出したころです。私もオータパブリケイションズのなかで「ホテリエ倶楽部」というメーリングリストを立ち上げ、現場のホテル業界人たちとつながり、情報交換するようになりました。
宿屋塾の構想が浮かんだのはこの中からだったと思います。そして、2001年4月、「ホテル業界をもっとよくしていきたい」という共通の想いで集まった30人ほどの業界人を相手に、第一回の宿屋塾を開催しました。2003年12月に、ホテレスの新年特別号の取材でコーネル大学ホテル経営学部の取材をさせていただき、私はホテルマネジメントの実務が学べる場の必要性を実感し、それまで月一回のセミナー開催に留まっていた宿屋塾を拡大し、名称も宿屋大学として、セミナー回数を増やし、体系的な内容を構築していくようになりました。私自身もミッションを「ホテル業界人の応援」に絞り、ホテリエ事業部という新しい部署をつくらせていただきました。私が就活の応援をしてホテル業界人になった彼らの人生を応援し、彼らとともに日本の宿泊産業を盛り上げることを天職と決めたのです。
5年前に独立し、ビジネススクールを起業した想いはこの実現のためです。
「知っている」と「できる」の間の大きなギャップ
最も評価の高い受講者に贈られるMVP賞を授与された
ホテル日航ハウステンボスの久野隆紹氏
そして、最もやりたいことがありました。それは「日本人のプロフェッショナルホテルマネジャーの養成」です。顧客満足と社員満足と利益をバランスよく高められ、オーナーからも信頼され、さらには鞄一つで世界を渡り歩ける筋金入りのホテリエの育成です。そのための半年間のシリーズ講座が「プロフェッショナルホテルマネジャー(PHM)養成講座」です。
先週末、第三回「PHM養成講座」が修了しました。全15回のプログラムを終えました。最終回では、受講者全員が「講義で得たことをどう実践し、どうイノベーションを起こしたか」を大勢のオーディエンスの前で発表します。みなさん、実践されたことを具体的に、そして数字で示してくれました。隔週で行なう5時間講座のほか、課題提出や振り返りを仕事の合間にしなければならないという非常にストイックな半年間を送られ、大いに成長を見せてくれました。
「知っている」と「できる」の間には、大きなギャップがあります。そのギャップを飛び越えさせるには、ビジネススクールとして、「レクチャーで伝えて終わり」というスタンスではなく、「知識を自分の知恵に換えていただき、実際にやってみて、成果につなげる」までを伴走するスタンスで臨むべきであり、第三回「PHM講座」は、そのスタンスで取り組み、見事、みなさん成果につなげていただいたことを実感したのです。ホテル業界の向上に、僅かでも貢献できたことを感じられた瞬間でした。
『ホテル業界就職ガイド』創刊20号発行
奇しくも私の仕事の原点である『ホテル業界就職ガイド』の20号目が、今月出来上がりました。いまだに私が取材・執筆している私の天職の書籍です。PHM講座修了生のなかには、十数年前の本ガイドの中の就職活動体験記の取材で登場したホテリエもいました。
来年、私は年男です。還暦までの12年間で、どれだけ宿屋大学を立派に育て、どれだけ多くのプロフェッショナルホテルマネジャー養成ができるか……。方向性は定まりました。やるべきことも定まりました。あとは、アクセル全開で突っ走るだけです。
来年も、宿屋大学をよろしくお願い申し上げます。