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【14.09.23】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.88)
「関係の質」の向上から始めよう
先週の土曜日(9月20日)、ホテルグリーンコアと宿屋大学が共催で行なっている「ホテルイノベーション研究会」の二期目がスタートしました。これは、グリーンコア流のマネジメントをお伝えすることを目的に、月一回、土曜日の午後に12回開催する一年間の講座です。
この講座に、ある地方都市でビジネスホテルの経営を父親から託された女性(30代)が参加されました。彼女は、自身の課題を語る場面で次のような話をされました。
「数カ月前に、大手チェーンホテルで働いていた女性(Sさん)が入社してきました。仕事に熱心だし、経験もある。とても仕事のできる人でした。ところがつい最近、辞めていってしまったんです。私としてはもっといて欲しかったので引き留めましたが駄目で、去っていきました。『ここの人たちは何度同じことを言っても分かってくれない。同じ失敗を繰り返す人たちばかり。正直、疲れました』というセリフを残して・・・。私もホテル運営は素人なので彼女からいろいろ教わりたかったので、とても残念です」
こうしたことは、みなさんの職場でもありがちなことではないでしょうか。やる気満々な人が空回りして、ちっとも職場がよくならず、アウトプットの質も量も結果的に向上しない例、逆に職場環境が劣化してしまう例です。頑張ろうとする自信家ほど、Sさんのような状態や結果になりがちです。
グリーンコアの会長と社長は、この女性経営者に、こんなアドバイスをされました。
「Sさんは、きっと『関係の質』の大切さを理解していなかったんですね」
そして、下の写真にあるようなスライドを見せてくれました。
「人と人の関係の質は、私たちが思っている以上に企業の業績に大きく影響する」
これは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した論理だそうです。キム教授は、「組織の成功循環モデル」として発表しています。
簡単に説明します。
まず、成功する循環モデルは必ず「関係の質」から始まり、時計回りで循環します。
組織の人間関係の質が高いと、相互理解を深め、お互いを尊重し、一緒に考えるようになります。
すると、スタッフは自分で気づき、仕事が面白いと感じるようになります。「思考の質」が向上します。
「思考の質」が向上すると、自分で考えて自発的に行動するようになります。つまり、「行動の質」が向上します。
結果、「結果の質」が向上して成果が得られるのです。
そして、また信頼関係が高まって「関係の質」がさらに向上するという循環が繰り返されるというわけです。
逆に失敗する循環モデルはどうでしょうか。
失敗の循環モデルは「結果の質」から始めてしまうことに起因します。
当然ながら質の高い結果が最初から得られるわけがありません。
すると、誰かのせいにしたり、対立が生じたりします。
「関係の質」があっという間に悪くなります。関係の質が悪くなると、「叱られないようにするにはどうしたらいいか」「失敗しないようにするにはどうしたらいいか」ばかり考えてしまい、仕事は受け身になっていきます。そして、仕事がつまらないと感じ、「思考の質」が低下します。自発的・積極的に行動しなくなり、「行動の質」が低下して成果が上がらず、「結果の質」がさらに低下するのです。
つまり、「結果の質」を追い求めれば求めるほど「結果の質」は遠ざかり、「関係の質」を第一に考えると結果、「結果の質」が向上するという論理なのです。
前述のSさんの退職は、まさにこの論理で説明できるのです。Sさんは、「結果の質」を最優先で求め、最も大事な「関係の質」をないがしろにしたのですね。
まずは職場の人間関係の向上を目指してみる。すると、結果、業績が上がる。経営者やマネジャーは、ぜひこれを信じて実践してみてください。