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【14.04.01】第三回「日本のおもてなしは競争優位になるか 〜シンガポール×ホスピタリティビジネス〜」
「ホスピタリティ人材はどこにいる?」
別府に湯布院、温泉、豊後牛、関アジ関サバ、大分麦焼酎……、私は、福岡県から大分県の大学に進学したのですが、そのときは、「大分は田舎だなぁ」と思いましたが、温泉に30円で入れるし、海、山、川があり、授業の合間によく遊びに行っていました。大分県では1980年から「一村一品」運動という、特産物振興運動を推進し、地域ブランド確立に早くから取り組んでいたので、魅力的な場所が沢山ありました。
今回は、ホスピタリティ人材とその組織デザインを考えてみたいと思います。
1、手元にあるものを資産化する
「地域の魅力を商品化する」とよく言いますが、ちょっと考えてみると、「商品化」でなくて、「資産化」したいということなのかなと思います。
「商品化」とは、手元にあるものに、市場価値からはじき出した、値札を張って並べ、購入されて、消費されて、文字通り消えてなくなってしまうこと。
一方、「資産化」とは、手元にあるものを、少し遠くから見て、「実はそこにしか、ないんじゃない?」という部分に注目する。そして、それしか目に入らないように、余計なもの少しずつを消していく。資産は無くならないので、売れるか売れないかにあまり関係なく、「こんなにいいものだったんだ」という発見を繰り返していくこと。
では、サービス業において、人材とは、商品でしょうか、資産でしょうか。
大分と同じくらいの知名度だったのに、一躍全国区になった彼が率いる熊本の観光ビデオに答えがあります。
「くまもとで、まってる。」
「いい人材いない? ホスピタリティのある人材はどこにいるの? 誰でも教育したらいい接客ができるようになるの?」
これは私が最も多く受ける質問です。
答えは映像に出てくる通りです。
2、個人とチームの「型」
あなたや、あなたの周りにいる人がホスピタリティ人材であり、もしそうでないと感じるなら、「資産化」というプロセスを経てないだけです。個人のホスピタリティの「型」と習得と、チームでの「型」の習得。教育とOJTで誰でも十分ホスピタリティ人材になれると考えています。
サービス向上のために接客研修を行っても、そのブランドとマッチしていなかったり、今の忙しさの中ではできないことだらけだったりでは、役には立ちません。お客さまと接するもっとずっと後ろのほうから、コミュケーションをデザインし直す、といった発想が必要です。特に、飲食店やホテルなど、グローバルにビジネスを展開するサービス業の場合、従業員の背景も多様、お客さまの好みも色々となった場合、どのようなサービスをどんな形で提供するか「型」が命です。
「型」とは何か。それはズバリ、体、筋肉の動かし方です。スポーツやダンスの振り付けを教えるように手足の動かし方をやってみせ、そして言葉でも伝えます。ホテルのスタッフに研修するとき、「丁寧に」「ゆっくり」と言っても感じ方は人それぞれです。具体的に「ドアが閉まるまでドアノブから手を離さない」「足音をさせずに歩く」と言うと、外国人のスタッフや新人スタッフにも伝わります。ぎこちなくても、なんとなく「型」らしきものができはじめます。「型」らしきものができてくれば、リズムが掴めるようになります。根拠はないのですが、サービスは三拍子を意識すると、美しく見える気がしています。
次にチームの「型」を作ります。どういうことが起きたら、誰がどう動くのか、パターンを作っておく。問い合わせをしても、「後ほど営業から連絡します」といって連絡が来なかった、といった経験が誰にもあると思います。窓口に入った問い合わせの担当の振り分けはどうするのか。現在一人に届くメールは一日あたり平均100通だそうです。サービス業や製造業の現場に近い部署は、管理・事務作業が苦手な人が多いので、誰がパンクしているか、どこがコミュニケーション不全に陥っているか、その際は誰がサポートに入るのか、サポートに入った人の業務外の業務はきちんと評価されるのか、いい接客ができるかどうかはチームの「型」ができているかどうかで9割決まっています。
3、「多対1」になるようにコミュケーションをデザインする
ホスピタリティは、「1対1」の技術と言われますが、目指すは「1対1」の場面をなるべく多く作り、お客さまから見て、「多対1」を実現することです。
多くの場合、感動は、数や量に関係しています。本では、思いやりのあるスタッフとお客さんとの交流が描かれますが、現場を見ていると、また足を運んでくれる理由の多くは、「あの人がいるから」というより、「いつ来てもいいサービスが受けられるから」という信頼です。予約の人の感じがよかった、エントランスですぐに気づいてくれた、チェックインがスムーズだった、そして段ボールの荷物を届けてくれたときに、カッターも待って来てくれた。
それが最後の一滴となって、ししおどしがカッコーンと鳴るように相手に響くのが、目指すところです。あの人もこの人も私のことを認識してくれた!承認された喜びは、「安さ」よりずっと心を掴みます。
ホテル、レストラン、車や家の購入、保険、フィットネス会員…いずれも購入決定後に始まるサービスです。購入前、購入時、購入後と、担当者が変わっていっても、信頼関係は引き継げる「多対1」。チーム内でのやりとり、他部署とのやりとり、メール、電話、データベースの活用を再確認し、「多対1」のコミュニケーションをデザインしてみてください。
この春、新しいスタッフを迎えるみなさま、その人に対して「多対1」のコミュケーションを試みてください。上司やチューターに相談できない悩みが毎日山のようにありますから。
ホスピタリティ人材は身近にいます。