【14.03.18】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.81)

優良企業に共通する合言葉

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 就活シーズンになると学生に就職活動の話をする機会が増えます。そこで最近は私が気に入っている内田樹氏の「キャリアのドアに、ドアノブはない」という話を披露します。
 この話は氏のブログ「内田樹の研究室『仕事力について』」に詳しいので興味のある方はそちらをお読みいただきたいのですが、簡単に解説すると「キャリアのドアは自分で開けるものではなく、誰かが開けてくれるのを待つものである」ということです。「仕事とは、自分で選ぶものではなく、仕事の方から呼ばれるもの」ということです。
 これは私自身の経験からも納得する説であるし、天職についてのいくつかの書籍にも同様のことが書いてあります。私が学生の頃、旅行作家になりたかったのに今はビジネススクール運営を夢中になってやっているし、「好きでもないのになぜか続けてしまった仕事が実はあなたの天職なのだ」という話が書籍に書かれています。
 だから学生にはこう言っています。
「とにかく精一杯、就活をやってください。その結果があなたにとって最善の結果です。そこでとことん頑張ってください。天職はその先に見えてきます」

 では、キャリアのドアはどういう人に開かれるのか。
 今回のブログのポイントはここです。
 それは、「あ、それ、私、やっておきますよ」と言える人です。これが答えです。
 仕事というのは役割分担や範囲が決められているのがふつうです。「Aさんの仕事はこれとこれとこれ、責任の範囲はこういうことです。これ、しっかりやってね」と決められている。そして、BさんもCさんもDさんも決められている。
 ところが、全員が自分の仕事を完璧にやったところで企業は絶対にうまく機能しません。
 なぜなら、AさんとBさん、BさんとCさんの間にも必ず仕事は発生するからです。誰がやってもいいけれど、誰かがやらなければならない仕事という仕事が必ずあるのです。
 こういう仕事を積極的に拾っていく人に、キャリアのドアは開かれるのです。
 そして、そういう人をたくさん持っている企業こそ、堅強な企業といえます。
 企業とは、個人ではできないことをたくさんの人が集まって行なうことでより大きな価値創造をするために存在するものです。ですので、集まった個人がバラバラな動きをしていては目的の遂行をしづらくなります。一人一人のやらなければならない仕事の範囲(米国ではジョブ・ディスクリプションというものに明確に記されます)と範囲の間に転がる仕事を放置する企業は穴だらけの企業です。かならず問題が発生し、発生すると誰かのせいにします。だからこそ、結束を強めるかのように一人一人の業務範囲の間の溝を埋める「あ、それ、私、やっておきますよ」という行為が必要なのです。
 それを言える人がたくさんいる企業は本当に強いし、間違いなくみんな笑顔で仕事をしていますし、顧客満足度も高い企業です。そして、仮に問題が発生しても誰かのせいにするのではなく、問題の根本原因を皆で考えていくことができる優良企業と言えるのです。


≪予告≫
 私が夢中で取材しているホテルグリーンコアは、上記のスタンスの典型的な企業ですが、そのグリーンコアを綴った『巡るサービス』の第二弾(タイトル未定)の原稿を昨日入稿しました。249ページ。あとは、編集者と推敲を重ね、「あとがき」を仕上げていきます。
「ぶんか社」さんというわりと大きな出版社さんから6月14日発売です。
 テーマは、「自発性を育む見守るマネジメント」。グリーンコアのクリティカルコアである「アプローチ・オペレーション」を下支えするのがスタッフの自発性(やらされるのではなく、自らやりたいという欲動でホスピタリティを行動に移す)ですが、それを実現するのが「見守るマネジメント」。その事例(エピソード)と、なぜそれが必要なのか・・・。
 もう一つは、「Worth」の探求。高利益率や規模の拡大ではなく、お客さまとのご縁を大事にすることで長期利益、長寿企業を目指す経営。そのために必要なのが唯一無二の「Worth」。日本の企業が目指すべき方向はこっちじゃないでしょうかというメッセージです。
 そんな思いを一冊に込めました。

 乞う、ご期待です。

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