【13.08.06】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.67)

すべての打ち手に意味がある。

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 先週、家族旅行で「星野リゾート トマム」に宿泊してきました。2泊3日の滞在中、リゾートを満喫しつつ、ビジネス的に「うまいなあ〜」と思わせる施策をなんども感じました。
 ゲストとして大いに感じたことは、「来て欲しいお客さんのニーズにしっかりと応えつつ、そのちょっと上を提供し、かつお客さんに納得のいく出費をさせてしまう」ということと、「すべての打ち手に意味がある」ということです。
 なぜ星野リゾートトマムは、ニーズに応え、その上を行く価値提供が的確にできるのでしょうか。今回は仕事や取材ではなくプライベートの滞在でしたので、あくまで私の推論ですが、シェアしたいと思います。

 その最大の理由は、マーケティングの軸がしっかりあって、ぶれていないということだと思います。来てほしいお客さま(ターゲット顧客)の設定があって、その人たちのニーズを探り、その人たちから選ばれる要素を揃えて、それらを訴求する一連の過程が一貫してぶれていないのです。
 おそらくトマムのターゲットと意思決定者は、家族のお父さんでしょう。
 ニーズは、「家族との楽しい休日を過ごし、子供を喜ばせ、お母さんを骨休めさせたい」「家族との思い出を作りたい」ということかと思います。それが「思う存分実現可能ですよ」という訴求のために、ウェブサイトには子供がはしゃぐ写真、エステでうっとりする奥さんの顔、雲海テラスや気球といったワクワク感をそそるリゾートアクティビティの写真が満載されています。
 ゲストが宿泊するホテル選びをする際に、おそらく決め手となっているであろう「雲海テラス」については、眼下がすべて雲に覆われているテラス(つまり、雲の上のテラス!)で興奮する人たちの様子を動画で大きく紹介しています。私を含めた世のお父さんは「この景色、家族に見せてやりたい」と必ず思うでしょう。
 また、夏と冬とではニーズが当然違うので、訴求する要素もまるで違うので、ウェブサイトの夏バージョンと冬バージョンの二つを用意しています。

 もう一つ、感じたことは、「すべての打ち手に意味がある」、逆を言えば、「意味のない打ち手は一切やらない」ということです。
 ホテルによっては、意味をまるで感じないディスカウントやプレゼントをされていますが、トマムでやっている施策はすべて「必ずビジネスにつながっている」ことを感じます(これも推論ですが)。
 たとえば、雲海テラスに行くゴンドラに乗ると、雲海テラスの写真が印刷された絵葉書をもらえます。頂上にはポストがあって無料で発送してくれるのです。ゲストは知り合いにその葉書を送ります。それが口コミ効果になって、星野は新しい顧客獲得につながるのです。
 ビュッフェレストラン「ニニヌプリ」では通常1500円のアルコール飲み放題が「17:45までのご入店で500円に」なります。これも、単なる客引き施策ではありません。このレストランは、夜はいつも待ち時間が発生します。それが顧客不満足につながります。ですので、集中する来店を分散させるためにこのような打ち手をやっているのです。
 ビジネスは、意味のない打ち手をやっている暇はないのです。意味のある打ち手とは、顧客満足や売り上げ、リピートにつながる施策です。その一つ一つがマーケティング戦略のプロセスにつながっている戦術施策になっていることです。
 それらを一つ一つ丁寧に検証してアクションに落とし込んでいることが星野リゾートのすごいところかと思います(ご本人たちは、「なにを当たり前のことを言っているのだ」と感じるでしょうが・・・)。全室で約900室もある経営が非常に難しい巨大なリゾートも、星野リゾートが運営するようになり黒字経営になっていると聞いています。

 どうでしょう、あなたのホテルで「意味のない打ち手」打っていませんか?

【星野リゾート トマム 公式ページ】 http://www.snowtomamu.jp/




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