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【13.05.28】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.62)
「友だち接客」
(写真はイメージ)
直木賞作家の角田光代さんが、日曜日(5月26日)の日経新聞朝刊で書いていたコラムが面白かったのでここで紹介したいと思います。
「接客スタイルには流行がある」という話です。角田さんは、接客スタイルの変遷は4つのタイプに分かれると書いています。
まず、バブル経済期の「見下し接客」。このころには「横柄な態度がはやっていた」と言います。客を怒鳴りつける店主や、小馬鹿にしたようなブティック店員などが多かった。
その次に来た流行は「機械のようなマニュアル接客」。一人でフランチャイズの飲食店に入って行って、自分一人というのは一目瞭然にもかかわらず「何名様ですか?」と聞かれる。また、「量の調整はできますか?」など、マニュアルにないことを聞くと、エラーを起こしたPCのようにフリーズしてしまう店員などがいたと言います。
続いて来たのは「必要以上に丁寧な接客」。買い物をすると出口まで見送りに来てくれる。このころは、「度を超えたマニュアル対応はなくなり、店員さんはみな新切に丁寧に対応してくれるようになった」といいます。
そうして最後、最近流行り出した流行があるそうです。それが「友だち接客」と角田さんが呼ぶスタイルです。親切でにこにこしていて気持ちよく、話しかけてくる。「よい休日になりますように!」と、作りモノではない笑顔で見送ってくれる。一様に親しげであり距離が近い。そして角田さんは、これらも「いまの時代や経済と深くかかわった現象なのだろう」と推測して、この傾向を戸惑いつつも歓迎しています。
もちろん、このエッセイの仮説は、サンプル数1の根拠しかないので正しいかどうか分かりません。角田さん自身も、年齢が関係しているかもしれないし、たまたま同じような接客が続いただけかもしれないと述べているように、個人的な肌感覚での仮説です。ただ、同い年(1967年生まれ)の私も、頷くことは確かに多いので、あながち間違ってはいないと思います。
少し整理してみますと、
@見下し接客
↓
A機械のようなマニュアル接客
↓
B必要以上に丁寧な接客
↓
C友だち接客
という順番で推移しています。徐々に店のスタッフとお客さまの距離が近づいていることがわかります。と言うか、店側がお客さまに近づこうとしています。Cの「友だち接客」は、まさに「非分離で述語的」な関係性を築きたいというスタンスの現れです。もちろん、馴れ馴れし過ぎる対応を嫌がるお客さまにはそうすべきではありませんが、心が通い合う接客が、「仕事だから」という理由ではなく、「心からやりたい」という思いでやっているサービスパーソンやサービス企業が増えることは消費者にとっても嬉しいことですし、サービス産業全体の成熟が進んだ証拠かとも思います。
※「非分離な」・・・お客さまとスタッフが、お互い心でつながっている関係
※「述語的な」・・・自分という主語ではなく、相手という述語を第一義に考える行動
時代や経済の動きと関連して解釈すると、きっと「マニュアル接客で、同じものを同じようにより効率的に提供する」スタイルばかりだと、それは価格だけの競争になってしまう。価格競争は、コスト優位性(より安く提供できる仕組み)のある大資本しか生き残れないということに気付いての変化かもしれません。これはサービス企業サイドも気付いたことでしょうし、消費者もベルトコンベアのような画一的な接客に辟易している現れなのかもしれません。
時代はループします。
今年に入り、景気は上昇しています。人々の財布のひもが緩んでいます。ホテルも好調でどこも稼働も単価も上昇しています。
そんなとき、くれぐれも「見下し接客」にならないことを祈っています。