【13.05.14】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.61)

So What ?(だからなに?)


 先日、いまベストセラーになっている『統計学が最強の学問である』(西内 啓 著、ダイヤモンド社刊)を読んでいて非常に腑に落ちることがありました。
「データ分析において重要なのは、『果たしてその解析はかけたコスト以上の利益を自社にもたらすような判断につながるだろうか?』という視点だ」という指摘です。
 顧客分析とかマーケティング環境分析などをして「何となく現状を把握した気になる」「ふ〜ん、そうなんだ」で終わってしまうことがよくあります。そして、特にホテル業界には多い気がします。
 調査・分析をして、何かしらの判断・決断をして具体的なアクションにつなげない限り、調査・分析をする意味はない。西内氏は、具体的な行動を引き出すためには次の3つの問いに答えるべきと言います。

@何かの要因が変化すれば利益は向上するのか?
Aそうした変化を起こすような行動は実際には可能なのか?
B変化を起こす行動が可能だとしてそのコストは利益を上回るのか?

 この3つの問いすべてに「イエス」と言えなければ調査や分析をする意味はないと。

 統計解析や調査分析に限らず、「意味を考えずに“ふ〜ん”で終わっている」こと、知識を得ただけで終わっていることは、実に良く見聞きします。
 宿屋大学に来られる方の中にも、2時間の講座を聴きに来られて学んだことだけで満足している方がいます。セミナーや講座は、学んだ知識やノウハウを使って初めて意味があると思います。
 有名なSWOT分析も、強み・弱みなどを把握して終わっているケース、ないですか。分析の結果から「うちのこの強みは、こういった新しいニーズに対して、競合各社よりも競争力がある。だからさらに強化し、強く打ち出していこう」といった決断とアクションにつなげるべきです。
 ロジカルシンキングのピラミッドストラクチャーなどのフレームワークも、「その概念を知っている」ことと、「実際に使ってみて決断をアクションにつなげる」ことの間には非常に大きなギャップがあります。自戒も含め、知って満足し、思考停止状態にならないように使ってみることが大事です。

 この辺も、日本の「詰め込み教育」の弊害なのでしょうか。社会に出て価値を生み出す仕事をしていくためには、知識を増やし、自らの頭で考え、それをいろいろな人とコミュニケーションしていかなければなりません。でも、日本の教育の多くは「知識を授ける」にばかり偏っています。ですので、資格検定なども知識を問うものが多いです。
 ホテルの現場でも、先輩からの指示を受けたり、マニュアルを読んで、その意味を解釈しないで鵜呑みにして行動しているケースがありませんか(「黙って言われたとおりにすりゃあいいんだよ」という過度な上下関係が原因だと思いますが)。「なぜ、そうするのか? なぜ、そのようにするのか?」を考えることを手抜きしていませんか。
 ホテルが、ボランティア事業ではなく、ビジネスである限り、日々の接客においても、「これをすることによって、どう会社に貢献するのか(短期利益・長期利益につながるのか)」を考えて行なうことが現場スタッフにも求められることだと思うのです。

 So What ?(だからなに? で? そのことから何が言えるの?)という突っ込みを自問自答する癖をつけることで、正しい行動につながることが増えることは間違いないと思います(自戒の念も込めて・・・)。

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