【13.02.05】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.54)

日本流ホテルマネジメントを世界に

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 グローバル資本主義の広がりが豊かな社会づくりに向かっていないと感じるのは私だけでしょうか。
 ITの発展によって合理的な取引が加速し、情報がガラス張りになり、いまでは誰にでも瞬時に値段を比べる仕組みが与えられています。そういう世界では、より安くモノを作れ、より安く仕入れられ、より安く提供できる仕組みを持つ企業や商品が断然有利ですが、そうなってくると資本力がものを言います。つまり、大企業だけが勝ち残る世の中です。どれだけコストパフォーマンスの高いものを提供できるかの勝負であり、同じ土俵での勝者は基本一人か数人だけ、あとは全員敗者となります(極端な言い方ですが)。アパレルではユニクロが、家電量販店ではヤマダ電機が、流通ではセブンイレブンやイオンが市場を席巻し、小さくても個性的な輝きを発している個人店や、中小企業を駆逐し続けています。
 でも、そんな社会、果たして豊かな社会と言えるのでしょうか、そこの住人は幸せでしょうか(私が考える豊かな社会は「選択肢の多い社会」です。多様な価値観が共生し、それぞれのニーズを満たせる社会です)。
 ITが発達し、グローバル資本主義をみなが尊重し、合理的なことが尊ばれ続けた結果、そこそこの品質のものが廉価でどこでも買える便利な時代になった一方で、いまの日本社会は、どこか、本当の豊かさとは違う方向に進んでいる気がしてなりません。

 2月3日(日)の日経新聞朝刊で、ハーバードビジネススクールのニティン・ノーリア学長がこんなことを言っています。
「短期的な株高は、長期的な企業価値を測るベストのモノサシではない。企業経営の評価を過度に市場に依存しない方法を探るべき。ただし、長期的経営は、その答えではない。四半期の業績が悪い時に『結果はいつか出すので信じてほしい』という経営は規律を緩める。(中略)経営者は短期でも長期でも成果を追うべきだ。(中略)節度ある利益を品格ある方法であげていくべき」

 この、「節度ある利益を品格ある方法で」というフレーズが、私にはとても腑に落ちてしまいました。
「節度ある利益を品格ある方法で」とは、これまでの「おもてなし至上主義」でも、「グローバル資本主義」でもないと思います。「ホスピタリティを効かせたビジネスによって、長くお付き合いする関係づくり」の経営なのだと思います。そして、これこそ「相手を敬う、配慮に優れた日本人」が生み出し、熟成させ、世界に発信できる価値であり哲学であり、マネジメントの姿なのだと思います。
 先日、宿屋大学講義に参加したパナソニックの幹部の方が、「松下幸之助氏が目指していた経営とは、ホスピタリティ経営だと思っています」と教えてくれました。真意までは聞けなかったのですが、昔はどこの街にも存在した「ナショナルの店」のスタイルこそ、ホスピタリティを効かせた経営なのではと気付きました。家電量販店のように激安ではありませんし、選択肢も限られていますが、いざというときすぐに跳んで来てくれて、家電製品の故障を修理してくれる。頼れる存在なわけです。細く長くお付き合いする関係です。量販店は、こんなサービスはしてくれません。量販店が「利益にならないから」と切り捨ててきた「一見不合理なサービス」です。短期的にはムダに見えても、長期で見たら実は大事なサービスなのです。

 冒頭で述べた通り、グローバル資本主義が、もし豊かさとは違う方向に進み、臨界点にまで来ているとしたら、量販店の未来は暗いでしょうし、今度は、再度、量販店が「利益にならないから」と切り捨ててきた「一見不合理なサービス」、つまり、ホスピタリティによる心と心で繋がる関係づくりによる経営が尊ばれると思うのです。

 そうなったとき、「ホスピタリティで繋がる関係づくり型日本流マネジメント」は、世界から注目されます。そして、その形を体系化し、流儀を確立するのはホテル企業なのではないでしょうか。グローバル市場という同じフィールドで世界の企業が競い合うサービス業であるホテルビジネスでこそ、できると思います。そして世界に発し、世界に売れる日本の価値を広めることが、世界に誇れる日本を盛り上げることにつながると確信します。

「日本流ホテルマネジメント」の確立と普及、業界全体で目指しませんか。


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