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【13.01.08】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.52)
日本のホテルがつまらなくなった!?
新年、あけましておめでとうございます。
本年も宿屋大学をよろしくお願い申し上げます。
「ロマンとソロバンは両立するどころか、ロマンを忘れたらソロバンは合わなくなる」
これは、昨年宿屋塾でご登壇いただいた中村裕氏が残してくれたメッセージですが、昨年一年の私のテーマはまさにこれだったように思います。
私の親戚には、経営者が多く、年末に集った親戚の忘年会で、社員40人くらいの会社を営む従兄が、厳しい経営状況を私に吐露してくれました。
会社のお金が回らなくなってきている。営業マンには売り上げアップを求め、製作担当者にはコスト削減を求めている。会議の話は、数字ばかりだそうです。以前よりクオリティの低い商品を作り、一生懸命売ろうとする。結果、徐々に売り上げも利益も右肩下がりがずっと続いている。社員のモチベーションは下がり、離職も続いている。
簡単にいうとこう言う状況らしいのですが、「ああ、ここにも典型的な例が・・・」、と思いました。
私も一応経営者ですし、中小企業の経営者だった父親の背中を見て育ってきたので、お金に余裕がなくなると、どうしてもお金儲けに走ってしまうことは理解できます。
でも、理想を言えば、数字ではなく、「価値創造・価値提供」を第一に考えていかなければならない。継続的に価値提供する仕組みを作り、利益を残していく仕組みを作る。この順番を間違えてはいけないと思うのです(昔、松下幸之助翁が提唱していた「ダム経営」という話はこう言うことではないでしょうか。お金に余裕がなくなると価値創造を忘れてしまうことが往々にしてあるという教えでは?)。
もちろん、お金も大事なので考えないわけにはいかないと思いますので、その忘年会では「利益創造と価値創造を、切り離してまず考えてみたらどうでしょう?」と提案してみました。
これを一緒に考えてしまうと、価値創造のアイデアが狭まります。会社の経営資源を棚卸してみて、最大限価値創造できる会社の理想形(ロマン)を考えてみて、その上で実現可能なことはなんなのかというソロバンをはじく。もっと理想的な形は、ロマンを追い求める人と、ソロバンをはじく人を分ける形です(私見ですが、『巡るサービス』で紹介したグリーンコアは、祐子氏がロマンを求め、卓司副社長がきちんとソロバンをはじくという役割り分担、二人三脚がしっかりとできているようです)。お金を先に考えちゃうから価値創造が疎かになり、価値創造が疎かになってしまうから利益が徐々に減っていく・・・。
で、思うのですが、社員が動くのは、やっぱりロマンへの共感であり、クライアントのメリットにならないことを売ることで得る利益には、辟易してしまうのみだと思います。
先日、元マガジンハウスの島田始氏とお会いしました。
「anan」などの元編集者であり、ティラミスブームなどの仕掛け人です。
近々、宿屋塾にご登壇いただきますが、二人でこんな話をしました。
「日本のホテルがつまらなくなった」
昔は、流行を発信するのはホテルというのが定番でしたが、いま、ホテルから流行が始まることって思い当たりません、と。
ロマンを忘れたからだと思います。
今年は、島田さんなどに触発を受けながら、「面白い発信ができるホテル業界」を復活できるような働きかけができればと思います。
※写真は、オーストラリアのブルーマウンテンという世界遺産の街にあるチョコレートショップでいただいたミルクチョコレート。自分で作りながら飲みます。ろうそくで下からミルクとチョコチップを温めながらかき混ぜ、鉄のストローで飲みます。ストローの先はスプーンになっています。こんなスタイルを発信するのもホテルの役割かと・・・。