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【12.10.02】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.46)
「人が人として、人のために働く」
オータパブリケイションズ刊、1500円+税
http://amzn.to/SlQhSx
私が、今年、最も夢中になって取り組んで取材していた書籍が発売になりました。
『巡るサービス
〜なぜ地方の小さなビジネスホテルが高稼働繁盛ホテルになったのか』
本書の舞台であるホテルグリーンコアに、なぜ私は惚れこんでしまったのかは過去にご紹介していますが(「ホテルマネジメント雑学ノート Vol.41)、再度お伝えすると、効率化ばかりを追求する今のホテル業界にあって、あえて「お客さまに積極的に関わっていく」スタンスでファン顧客を獲得、結果、安定経営を実現していることを知ったからです。
石丸雄嗣さんの名言である「自分という主語を消して、徹底的にお客さまのことだけを考え、自分の業務とのバランスの中で提供化してゆくこと。この難しさを超えていくことがビジネス上の差異化になります。経済合理性から考えたら一見不合理なことのように見えますが、人間的にかかわっていかなければだめということです。面倒くさくて、難しいからこそ真似されないのです」、これをグリーンコアは全社的に目指し、結果、強固なビジネスモデルを確立しているのです。
宿屋大学の目指すことは「顧客満足と社員満足と利益の3つを同時に向上できるプロフェッショナルホテルマネジャーの育成」ですが、グリーンコアは、まさにこれを実現しているのです。ホテル業界で課題となっている「おもてなしを利益に換える。ホスピタリティをビジネスに効かせていく」ということを(「結果的に」ですが)実現しているのです。
結果、お客さまはものすごくこのホテルを愛しているし、スタッフは大変な仕事を楽しみながら行なっているし、経営者もハッピーなのです(全館で増収増益であることよりも、スタッフやお客さまがハッピーでいてくれていることに対して喜んでいる)。つまり、関わっている人全員が幸せなのです。
グリーンコアのホテル空間には、そんな心地よい空気が流れています。
スタッフのことを心から思う経営者がいて、お客さまのことを心から思うスタッフがいて、スタッフのことを心から思うお客さまがいるのです。そんな思いやりが巡る場所があるのです。だから、みなグリーンコアに行きたい、戻りたいと思う。私もそうです。半年間、取材と称して何度も通ったグリーンコアに、いまはなかなか行く機会が減りました。それをとても寂しく思います。用もないのに行きたくなります。スタッフのみなさんに会いたいのです。
そんな場所を作ること、みんなが幸せを感じられる場所をつくることこそ、ホテルが目指す方向性なのではないでしょうか。
仕事はお金を得ることが目的ではありません。人を幸せにした結果、受け取るものです。昨日も、石丸雄嗣さんと話していましたが、「利益を追いかけたら、利益なんて出ない」。「利益を得たい」という主語を消して、徹底的にお客さんのことを考える述語思考にならないといけないのです。まさに「働く」です。傍(はた)を楽(らく)にさせることが仕事の目的です。
宿屋大学が目指す「顧客満足と社員満足と利益の3つを同時に向上させるホテルマネジメント」の一つの形がグリーンコアにはあります。このスタイルを、ホテルマネジメントのビジネススクールである宿屋大学は、グリーンコアさんや石丸雄嗣さんとともに、提唱していきたいと思います。
どうすればそのようなホテルマネジメントができるかは、本書のなかに詳述していますし、今後は、グリーンコアの金子卓司副社長の講演会も開催していきたいと思っていますので、ぜひとも、耳を傾けていただければと思います。多くの方が、私同様にこの論理に夢中になるはずです。