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【12.08.06】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.42)
総支配人は迎合者ではだめ、翻訳者であるべき
8月2日に開催した宿屋塾は、「ホテル再生の成功法則 〜オーナーを味方にする優れたGMとは?」と題して開催しました。講師は、(株)ナクア ホテル&リゾーツマネジメントの小谷田孝行代表取締役社長。私の期待以上の素晴らしいお話で、ホテルビジネスの難しさの本質、日本のホテル業界の課題の本質を表しており、その問題解決の取り組みを示唆したものでしたので、ここで共有したいと思います。
小谷田社長は、ホテルやリゾートのアセットマネジメント業務を統括し、数々のターンアラウンドに成功しています。ホテル運営の出身者として数々のホテル再生を手掛けています。
ここ10年くらいの間、日本でもたくさんのホテルが投資対象となって売買されました。そして、その多くのホテルでは、新しいオーナー・投資家と現場運営者とのコミュニケーションがうまくいかず、ときに敵対してしまっています。その結果、お客さまへの価値提供が改善できず、利益を残す体質改善のための方法論がコストカットしか見つからずにいるのです。
何度も申し上げていますが、ホテルというビジネスは、不動産業+サービス業です。よって、この両者が良好な関係で二人三脚をしないと成り立たないビジネスなのです。直営ホテルなら問題ありませんが、ときに利益相反する両者のコミュニケーションを良好にするには、間違いなく翻訳者が必要です。そして、この翻訳者が総支配人なのです。両者の間に立って信頼関係を構築する役割です。小谷田社長のやり方は、この総支配人を育成することと言います。
「投資家の言うことは95%正しい」
これは、講演中何度もお話された言葉です。
小谷田社長は、ホテル再生に着手する際、現場スタッフにこう言います。
「ホテル売却されたということは、現状がまずかったということです。このままのやり方で運営を続けても倒産するのです。そのためには、コストカットとブランドビルドを同時進行で行なわなくてはなりません。みなさんを解雇しないためにも、減給とワークシェアをお願します。投資家のいうことは95%正しいのです。投資家は占領軍じゃない。救世主です。ですが、われわれが現状のままだったら助けてもらえないのです。助けてもらうための努力をしようではありませんか」
こうした訴えを根気よく、何度でも伝えるそうです。
ただし、投資家だって5%くらいは間違ったことを言うかもしれない。だから、総支配人は投資家の迎合者ではいけないのです。言われたことをそのまま現場に伝えても反発が来るだけです。迎合者ではなく、翻訳者であるべきなのです。
そして、ホテリエとして真に実力があるかどうか。その実力とは、「問題点を把握し、どう解決するか。その解を持ち、実行できるかどうか」です。そのためには、@オペレーションをモニタリングし、アセットをチェックして現状を完璧に把握する。A円滑なホテル投資サイクルを回していくことです。
ときには、現場に指示をするだけではなく、自らやって見せることも大事。やればできるという事例をつくり、それを共有していく。手柄を取らせ、褒めてあげ、自信を持たせる。
そうしたターンアラウンド総支配人に最も必要なものはなにか。ビジネススクールとしてどんな智恵を提供するのが効果的か。講演会の後の食事会で、小谷田社長に聞いてみました。
「枝や葉も大事ですが、やっぱり幹が大事です。幹や軸がしっかりしていないと駄目ですね。それは何かというと、自分たちのお客さんは誰なのか、誰に何を提供しているのか。この軸がぶれていると再生なんてできません」
要するに、マーケティングということなのですが、SWOTとか3C分析といったツールの使い方以前に、「誰がどう喜ぶか」というベースをぶらさず、それを行なう仕組みづくりを正しく行なっていく。これが大事なのだと思います。
もう一つ、小谷田社長からいただいたメッセージ。
「死に物狂いで、本当にやっているか」
自分はだれよりも努力し、がんばっていると言いきれる人だけが、言い訳を言えるのです。小谷田社長には、死に物狂いでやっている人だけが持つ「覚悟」を感じました。そういう人にはみな心から従ってしまうのだと思います。
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