【12.07.10】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.40)

ホテル業界の将来を担う「金の卵を育てる」

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         東京YMCA国際ホテル専門学校一年生の試験の答案



 昨日、東京YMCA国際ホテル専門学校の一学期が終業しました。
 宿屋大学は、ホテル学校として日本一の伝統と歴史を持つこのホテル専門学校と一緒に運営しています。東京の高田馬場にある同校の校舎で、昼は若者がホテルマンとしての基礎知識やサービスノウハウを学び、夜、現役のホテル業界人がやってきては宿屋大学でホテルマネジメントを学んでいます。
 私は、この専門学校で講師をやらせていただいています。一年生(高校を卒業してきたばかりの若者です)に「ホテル事情」を、二年生に「就職指導」という科目を担当させてもらっています。
 ホテル志望の学生のサポートという仕事は、そもそも私の原点ですので、ホテル専門学校の講師の仕事は大変光栄ですし、やりがいを感じていますし、東京YMCA国際ホテル専門学校の教育スタンスや学生に対する愛情の注ぎ方も大いに勉強させていただいています。
 私がホテル志望の学生さんとお付き合いをするようになったのは、オータパブリケイションズで1996年に『ホテル業界就職ガイド』を出版したことがきっかけです。当時は、ドラマの「HOTEL」がヒットして、ホテルマンになりたいという若者が非常に増えた時期でした。ホテルの専門学校も雨後のタケノコのように全国に続々と誕生しました。そして、大学生の中にもホテル志望の学生が多くいて、私はホテル業界や就職活動の情報を彼らに提供することをし、それは17年経つ今でも続けています。『ホテル業界就職ガイド』を出し、就職セミナーや合宿での就職講座、面接対策講座などをして、学生さんたちと交流し、就職活動の苦楽を一緒に味わっています。

 東京YMCA国際ホテル専門学校でお世話になって3年目ですが、最初、とても驚いたことがあります。それまで相手にしていた大学生は、みな一様に熱心で自主的に勉強し、活動します。私たちオータパブリケイションズのスタッフは、彼らのニーズや熱意に応え上げればよかったのです。
 ところが、専門学校の学生というのは、全員が熱心で自主性があるとは言えません。もちろん多くの学生が本気で就職活動をしていますが、高校を卒業するときに「ホテルマンってかっこいいから、なんとなく決めて入学しちゃいました」という学生もなかにはいます。ですので、先生のやるべきことは彼らの熱意に応えるだけではなく、熱意のない学生のエンジンに火を点けることも大事な仕事となっています。
 そんな苦労を感じたころ、同校の教務の先生に、「やんちゃな子の、やる気スイッチを入れさせることって、大変ですね」と話しかけたところ、こんな答えが返ってきました。
「近藤さん、そこが面白いんじゃないですか。やる気のある奴は黙っていても自分で動きますから、放っておいてもいいです。そうじゃない奴たちがエンジンかけて自分の人生に真剣になっていくことのほうが達成感あります」
 私はこの発言を聞いて、なんと逞しいことかと感心しましたし、この学校の学生に対する愛情を感じました。東京YMCA国際ホテル専門学校は、学生を見捨てません。深い愛情で、とことん面倒見ます。
 このスタンスに感銘を受けています。それに、私は、ホテル業界の仲間入りをしてくれようとしている人たちは、それだけで無条件に愛情を感じます。そもそもホテル志望の若者というのは「人に喜ばれたい」というモチベーションを持つ、いい子ばかりですので、私も全員に精一杯のことをしようと心掛けています。

 毎年、高校を卒業してきたばかりの18歳たちと4月に対面します。そして私が担当する「ホテル事情」(ホテル業界の概要や実情を伝える講義)の冒頭でこう言います。

「これからの時代は、サービスだけやっていたら30歳になっても月給20万円そこそこだけど、アシマネ以上なら30万円くらいになる。結婚適齢期である30歳で30万くらいもらっていないと世帯を維持することは難しくなり、その結果ホテル業界を去っていく人がいます。だから『30歳でアシマネ以上を目指す』、これをこの講義の目標とします」

 そして、ホテル業界の厳しい現実も伝えます。その結果、多くの学生が、より一層ホテル業界への興味を強くしてくれました。授業に集中できない学生もいないことはないですが、最初から最後までずっと真剣なまなざしで講義に耳を傾けてくれる学生も多く、こちらもモチベーションがあがります。

 先週、最終試験を行ないました。私の講義は難しいという感想をいつも耳にしていたので、正直、どれだけ理解してくれているか不安ではありましたが、伝えたいことが結構伝わっていることを知って、ちょっとした達成感を憶えました。
 下記は、その試験問題の抜粋です。暗記だけしても理解していないとできない設問ばかりです。よかったら試しにトライしてみてください。

  〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
 
2 ホテルビジネスとは、不動産に_________を付加し、客室という空間を
________単位で提供しているビジネスである。(各1点)

3 ホテルビジネスの大きな特徴は、_________が効かないことであり、よって、売れ残ったら明日売ればいいというわけにはいかないことである。それと、売れる数に_______があるので、どんなに買い手が多くても、最大に売れる数は決まってしまうことである。(各1点)

5 売り上げを高めるポイントは二つ。一つは、_______を上げること。もうひとつは _______を増やすことである。(各1点)

6 客室数400、ADR(平均客室単価)7000円の「宿屋ホテル」の7月8日(金)の客室稼働率は80%だった。
7月8日(金)の売り上げは____________円である。(5点)
    RevPARは、___________円である。(5点)

9 マネジメント・コントラクト(運営受委託契約)の場合、3企業が業務契約を組んで行なうが、その3社の役割分担を明記せよ(各1点)

@ __________、A_________、B__________

10 北鎌倉の森の中に建つ「鎌倉森のホテル別館」は、客室数40、ADR1万8000円、平均稼働率70%のホテル。GOPは40%出ているという。大場恵美子さんは、このホテルをやってみないかと、オーナーである資産家である橘氏から誘いを受けた。契約条件は下記の二つ。さて、大場恵美子さんにとって、どちらが得な契約だと思うか。AかBに、マルをしなさい。※1カ月は30日として計算してください。(5点)

 A.GOPの10%の運営受委託契約(MC)
 B. 家賃80万円のリース契約

11 「マーケットイン」と「プロダクトアウト」を説明せよ(5点)

12 不動産投資ファンドとは、どういうビジネスか(5点)


(解答は、本日の「業界人がチェックすべき今日のニュース」ページに載せました)



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