【12.06.10】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.38)

  「本当のことを言おう」

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「本当のことを言おう」

 日本マクドナルドの営業本部長だった藤本ジョニー孝博さんが、宿屋塾で語ったメッセージです。

 本当のことを言うと、嫌われることがあります。
 本当のことを言うと、相手を傷つけることがあります。
 本当のことを言うと、人間関係が悪くなることがあります。
 本当のことを言うと、自分の立場が悪くなることがあります。

 だから、人は本当のことを言いたがりません。
 大人の社会では、本当のことを言わない方がいい場合もあります。
 言うべきことを言うには、タイミングも必要です。

 藤本さんは言います。
 
「今の日本は、本当のことをだれも言わなくなった。だから世の中がおかしくなった」

 その場の、近視眼的な体裁だけ保って、円滑であればいいと。
 その結果、うわべだけの関係になり、なあなあの関係で本気のぶつかり合いがない。
 だから成長もないし、本当の喜びや達成感も味わえない。

 ホテルの現場でも、これが起こっていませんか。

 見て見ぬふりをしていること、ありませんか。
 体裁や保身のために、本当のことを言わないでいること、ないでしょうか。
 その結果、不幸になっている人が多くいませんか。
 職場環境が改善されず、利益目標や、一部の人たちの個人的な欲のために、社員個人の幸せが犠牲になっていたりしませんか。
 その結果、離職が激しくありませんか。
 サービス残業や休日出勤を強いられ、その給与が支払われないということはありませんか。
 ホテル志望の学生に、「サービスだけやっていたらいつになっても月給20万円そこそこしかもらえない」ということをきちんと採用時に伝えていますか。
 安月給が理由でホテル業界を去る人がいることを伝えていますか。
「おもてなし」、やみくもな顧客満足追及だけでは、ビジネスはやっていけないことを伝えていますか。
 そもそも「儲かっていない」ということ(だから利益を残していかなければならないという事実)を伝えていますか。
 
 藤本さんは、こうも言います。

  「本当に優しい人は、強い人」

 つまり、真に優しい人であるためには、強い人でないといけない。
 愛情を持って本気でその人のことを考えられる人は、強くなければならない。
 強くなければ本当のことは言えない。 

 いまベストセラーになっている『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』を読みました。本書は、太平洋戦争で、なぜ日本が負けたのかを分析した『失敗の本質』の解説書なのですが、本書で挙げられている「戦争で負けた理由」のすべてが、今の日本企業の弱点、日本人組織の弱点、多くの日本企業が世界から劣後してきている原因と笑っちゃうくらい一致しています。
 第6章 なぜ「真のリーダーシップ」が存在しないのか? のなかに、こんなフレーズがあります。

 成果を挙げる集団となるためには「楽しくないこと」にあえて真正面から正対しなければいけない時があるものです。見たくない問題への正対を組織に課すリーダーが必要な理由はここにあります。(中略)誰かが厳しい立場で成果を確認し、言いにくい事実を伝えなければ、真の問題解決に近付くことはできません。最前線での堀参謀の行動は、直面する問題への覚悟の強さとともに、都合の悪いことをオブラートに包むような安易な居心地の良さを打破する大切さを私たちに教えてくれています。(204ページ)

 仕事柄、いろんなホテルを訪問しますが、劣悪な職場環境のホテルがあまりに多く、心を痛めます。就職活動中の学生から頻繁に受ける「お薦めのホテルはどこですか」という質問の答えに、ほんの数件のホテル企業名しか答えられないことが、とても辛いです。

 本当に愛情があるのなら、今いる組織をよくしようと思うなら、ホテル業界をよくしていきたいと思うなら、たまには勇気を出して「本当のこと」を言いませんか。「違うと思うことを違う」ときちんと伝えてみませんか。

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