【12.05.29】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.37)

神様が作った学びのプログラム?!

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「すべての出来事は、あらかじめ書かれたシナリオ通りに起こっていて、偶然と思えることは実はすべて必然である」
 最近、こんなことをよく実感します。最近の私の学びがタイムラインのようにつながっているのです。まるで「神様が私のために作ってくれた学びのプログラム」と思えるくらい・・・。

 何度も書きますが、私には、昨年あたりから特に関心を寄せているテーマが二つあります。「競争戦略」と「顧客満足を利益に変える方法」です。
 これまでいくつかのビジネスを先行者として立ち上げましたが、気が付くと真似されて競合他社が増え、価格競争になってしまうという経験をしています。また、宿泊特化型ホテルのマーケティングを研究すると、どうしてもコモディティ化を回避することを考えていかなければならないのですが、それはイコール競争戦略なわけです。
 もう一つが、「顧客満足をむやみやたらに目指しても儲からない」という問題。顧客満足を利益につなげるにはどうしたらいいかという命題です。
 そして、この二つを解決するキーワードが「ホスピタリティ」であるということは前回お伝えした通りです。石丸雄嗣氏が伝えるホスピタリティロジックが、その一つの方向性として極めて有用性が高いという話です。

 サービス業の利益の源泉はリピートしたり口コミをしてくれる顧客です。この顧客に浮気されないで生涯顧客で居続けていただくことがビジネスの秘訣なのです。生涯顧客がどれだけいるかが利益の多寡に大きく関係し、競争に勝つポイントです。
 では、生涯顧客を獲得するにはどうしたらいいか。今月二回に渡って開催した石丸さんの講義(ホスピタリティロジック・マスター講座)で、その技術を伝授いただきました。
 その人のためだけに考えた「使用価値」、しかも「他社にまねされない価値」を創造・提供しつづける。それを実現させるのが「顧客配慮の技術」です(使用価値とは、受け手(消費者)がそれを利用することによって生じる価値のことで、交換価値の対義語)。「とにかく、自分という主語を消して、徹底的にお客さまのことだけを考え、自分の業務とのバランスの中で提供化してゆくこと。この難しさを超えていくことがビジネス上の差異化になります」と、石丸さんは言います。経済合理性から考えたら一見不合理なことのように見えますが、人間的にかかわっていかなければだめということです。面倒くさくて、難しいからこそ真似されないのです。
 いま、私が取材を繰り返しているあるホテル企業では、DNA、企業文化として、この顧客配慮の意識と技術をスタッフみんなが共有しています。だから、スタッフは楽しそうだし、お客さまも楽しそうです。お互いが気遣っています。経営者とスタッフもお互い敬い合っています。石丸さんの言う「非分離の述語的な場所」になっているんです。私の頭の中で、このホテルのオペレーションと石丸さんのホスピタリティロジックがばっちりリンクしています。

 そのホテルのマネジャーが、インタビューでこんなことを言っていました。
「お客さまにファンになってもらいたければ、まずお客さまのファンになろう」
 こんな素敵なフレーズをいただいた取材と前後して、C&RM(株)の小林武嗣氏の講演を聴きました。CRM(Customer Relationship Management)がテーマです。
 その講演の冒頭で、小林氏は「CRMは、応報性を無視すると失敗します」と語りました。応報性とは、要は「両想い」のことのようです。企業は顧客に対し、長くお付き合いしてほしいと思って「あなたのために、うちはこんな価値提供ができます」という訴求をします。そのために顧客を知ろうとし、知ったことのデータとシステムを駆使します。けれども、CRMを実践した米国企業の7割は失敗したそうです。なぜか?それはやり方が片手落ちだったから。つまり、自分の魅力を顧客に伝えるだけで「自分もあなたのことを好きです」と、伝えなかったのです。CRMは、Relationship(関係づくり)ですから、一方通行ではいい関係にはなりにくいのです。そこには、やっぱり、思いやりや愛情が不可欠です。応報性、CRMとは、つまり「ホスピタリティ」そのものです。小林氏には、、「ホテルのCRM実践講座 〜お客さまとのご縁を大切にしてハッピーをシェアする関係づくり」というタイトルで6月27日 (水)に宿屋塾での講演をしていただきます。
 また、ある友人からJDパワーの沼波氏をご紹介いただき、7月5日 (木)に「ホテルのための“利益につながる”顧客満足向上ポイント 〜どこに満足するとリピーターになってくれるのか?(仮題)」という宿屋塾を企画することができました。

『ストーリーとしての競争戦略』、ホスピタリティロジック、CRM、CS調査、現在取材を重ねているホテル企業(今夏書籍出版予定)の取り組みなどが、学びのプログラムのようにつながっています。
 このブログの第一回を「シンクロニシティ」というタイトルで書きました。シンクロニシティとは「偶然に見えて、実はとても重要な意味が隠されている必然」のことですが、これをとても実感するのです。ただの気のせいかもしれませんが、「人生というドラマは、あらかじめシナリオが書かれている。それを精一杯生きればいい」と考えて生きることは、実に楽しいものです。



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