【12.05.15】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.36)

それって、誰の都合?



「社員満足と顧客満足には強い相関があるけれど、顧客満足と利益にはあまり相関がない」ということは、以前、このブログhttp://www.yadoyadaigaku.com/info/data1/110620-193618.htmlでも紹介しました。
 再訪する可能性もほとんどなく、口コミで新しいお客さまを増やしてくれる可能性もないお客さまに手間暇かけて満足を提供しても企業の長期利益にはつながらないということです。ドラッカー先生も「事業の目的は顧客の創造」と言っているように、顧客満足をつくるという行為が顧客創造につながらなければビジネスとしては意味がないのです。
 ではどうすればいいか。それは、顧客になり得るお客さまにロイヤルティを感じていただき、ファンになってもらい、リピートしてもらい、口コミで新たなお客さまを連れてきてもらうことです。

 宿屋大学の御案内や私のフェイスブックをご覧いただいている方は、よく御存知かと思いますが、昨年私が出会った石丸雄嗣さんがご教授される「ホスピタリティ理論」に、私は心酔し、今年になってすでに3回も講義をしていただいています。この理論を知れば、ホテル業界はまた一歩上のステージに上がれると確信しています。なぜなら、上記のファンをつくるために最も有効なのが「ホスピタリティ」だと思うからです。石丸さんも「“売りたい”を消し、“買いたい”を創ることができる」と言っているように、ホスピタリティが、ビジネスの最強の武器になると確信するからです。
 多くのホテル業界人はホスピタリティを理解されていると思います。ただ、それはとても感覚的なものであって、正確に人に伝えられるものではないのではないでしょうか。そういう私自身も、「ホスピタリティとは、相手のことを思いやって行なう打算のない行為であって、ビジネスは打算そのものだからホスピタリティ・ビジネスという言葉自体が矛盾を内包している」といった疑問をずっと抱いていました。石丸さんの理論は、そこをきっちり整理して伝えてくれ、しかもロジック(理論)として、誰にでも正しく伝わるように伝授してくれます。

 そうは言っても、ホスピタリティ・ロジックを完璧に理解してビジネスに生かすためには石丸さんの講義を3日間以上聴かなければならないのですが、私の理解で簡単に説明しますとこうなります。
 まず、理解すべきは「サービス」と「ホスピタリティ」の違いです。

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 上記図にあるように、サービスとは、いつでも・どこでも・誰にでも、「1:多」のスタンスで行なわれる画一化された行為であるのに対し、ホスピタリティとは、いま・このとき・この場所で、「1:1」のスタンスで行なわれる唯一無二の行為です。
 そして、両者の違いの見分け方でもっとも分かりやすい質問が「それって、誰の都合?」という質問です。行為がマニュアルや自社の効率を優先させた自分たちの都合(主語性)で行なっているものであればそれはサービス、お客さま(述語性)を優先させた行為であればホスピタリティなのです。サービスはマニュアルに縛られ、ホスピタリティはマニュアルを使いこなします。
 さらに石丸さんは、「ホスピタリティは全員にやろうとしてはいけません。なぜなら全員にやろうとした時点でサービスになります」と言います。これは、われわれに勇気を与えてくれる言葉です。つまり、均一に、平等にやる必要はないということです(完璧主義者は異論を持つでしょうが、私は、できるときにできることを精一杯やって差し上げれば、それでいいと思っています)。
 例えば、団体さんのチェックインなど短時間に大量の作業を行なわなければならないときなどは、ホスピタリティは発揮すべきではないでしょう。あるときはサービス、あるときはホスピタリティといったように使い分ければいいのです。
 お客さまに関心を寄せ、興味を抱き、配慮をし、ニーズやウォンツを提案、提供するというホスピタリティを実践することによって、お客さまは逆にわれわれ提供サイドに関心を寄せ興味を抱き、結果ファンになり、生涯顧客になってくれるのです。

 実は、このホスピタリティの理論は、対お客さまという関係性にだけではなく、対部下という関係性、もっというと人間関係全般に使える理論だと思っています。対部下にはどう使えばいいか、ここで述べようと思いましたが、長くなりましたのでまた次回に・・・。

 石丸さんの「ホスピタリティ・ロジック」http://yadoyadaigaku.com/program/JK1209.htmlは、近々、宿屋大学バーチャルセミナーとして発売を予定していますので、セミナーに参加できなかった方はこちらで視聴くださいませ。

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