【12.02.21】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.30)

さらなるホテル資産価値向上を目指して

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 2月15日、第1回「日本ホスピタリティ・アセットマネージャー協会セミナー」が開催されました。
 主催は日本ホスピタリティ・アセットマネージャー協会(HAMA Japan、マット・コックス理事長)、セミナー参加費 25,000円(会員は無料)、会場はストリングスホテル東京インターコンチネンタルというゴージャスな内容にもかかわらず、70人以上の参加者(しかも、ホテル業界を牽引する有名人が勢ぞろい!)を集めて盛大に開かれました。http://www.hamagroup.org/hama-japan.php

 アセットマネージャーって、なに? という人もいると思うので簡単に説明しますと、その言葉通り「アセット(資産)」を「マネジメント(管理)」する人のことです。10年近く前から日本のホテルも投資ファンドなどによる売買が活発化してきましたが、アセットマネージャーは、ホテルの資産を株主・投資家の代理として、管理し、価値を維持・向上させることが使命です。
 HAMAは、1991年に米国で設立された非営利団体で、HAMA Japanは2010年5月に発足されました。現在、名だたるホテルアセットマネジメント会社、投資ファンド会社、ホテル所有会社に所属する約25人が会員登録され、ホテルアセットマネージャー(以下、“HAM”)という専門職の向上、教育、意見交換などを目的として活動しています。

 第一回のセミナーは、「中国からのインバウンド」「リスクマネジメント」「レベニュー・マネジメント」「ホテルブランドの真の魅力とは」というテーマで半日間行なわれました。最初の3つのセッションは、ホテル運営に係るトピックであり、「アセットマネージャーの方々も、一歩踏み込んだ運営に関わる領域の勉強をしているのか」と感心させられました。
 米国においては、金融危機以降、運営者とホテルアセットマネージャーが、経営会社の状況を相互に確認し、厳しい外部環境による経営・運営への影響を最小化するために議論を行ない、相互で納得できる対策の立案と履行を行なうようになってきました。ホテル運営会社も、オーナーリレーション部門などを設立し、オーナーとの協議を重要視しています。チェーンによっては、収支の悪化を広範囲で予知した場合、自主的に、ブランドスタンダードの準拠に柔軟性を持たせるなど、協働でリスク管理を行なうものも出てきました。経営・運営環境が急速に変化する昨今、経営と運営の明確な二分割と言った棲み分けよりも、協働でリスクの最小化と収入の最大化を図る事がより重要視されています。
 また、財務的にホテル経営会社が危機的な状況にあるにもかかわらず毎月運営委託費の支払いをする現況の運営委託契約の在り方は、特に経済状況が厳しい昨今、片務契約ではないかとの議論もあります。これらは、賃貸形式のプロジェクトが増えている背景です。
 減収・減益の状況下、会社の運転資金管理や融資要件の達成等、会社倒産の回避責任を担うHAM は、運営者と連携を取り、様々な対策を履行してリスクを管理する責務があります。今後、運営者とHAM が連携・協働して、危機対策をタイムリーに実施し、リスクを最小化し、資産価値を向上させていくかが大きな課題となっています。

 最後のセッション、「ホテルブランドの真の魅力とは」では、グローバルホテル運営会5社の代表がパネリストとして登壇され、自ホテルの魅力や強みをアピールしていました。ホテルオーナー、アセットマネージャー(協会会員が担当するホテル数は合計約270施設!)を前に、「取得したホテルのリブランドの際はぜひうちにお声掛けを!」とアピールしていらっしゃいました。
 最後の質疑応答時間に「大変答えづらいでしょうが、オーナーさんの『こんな言動は困る』といったことはありますか?」と質問してみました。当然ながら皆さん、顔を見合せながら無言だったのですが、おひと方だけ、「オーナーの子会社であるホテル経営会社には社長という人がいるが、そういう人が、ホテルの現場にいるのを見たことがない」とおっしゃっていました。
 個人的には、オーナーから「ぜひうちのホテルの運営をやってもらいたい」と頼まれたときに、「すいません、うちはギャラが高いんですけどいいですか〜」と言える日本発のホテル運営企業がたくさん生まれることを望んでいます。ただし、「そんな強気なことを言えるホテル運営企業は世界を見渡してもフォーシーズンズくらいだよ」という話を友人のホテルアセットマネージャーから聞いていますので、道のりは長いでしょう。 
 もう一つ、宿屋大学では、健全・良好なパートナーシップを取るためにホテルオーナーのビジネス理論を理解するための講座「ホテル・オーナーリレーション」をホテル運営者向けに開講していますが、HAMA Japanさんには、この逆、つまり「健全・良好なパートナーシップを取るためにホテル運営者の理論を理解するための講座」をぜひともホテルオーナー向けに開講していただければと思っています。

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