【12.01.10】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.27)

ホテリエとしての誇りを取り戻そう


 昨年の一月から隔週で書き始めた本ブログも、お陰さまで二年目に突入しました。
 本年も、宿屋大学と「雑学ノート」、よろしくお願い申し上げます。

 新年早々の1月6日、あるホテル業界人の集まりに参加しました。これは、ホテルパーソン志望の大学生の就職支援がきっかけでホテル業界の仲間入りをした人たちが中心となっている同志の集まりで、かれこれ10年間続いており、数百人いるであろう同志はさまざまなホテルや他産業に広まっています。初代は一期生と呼ばれ、今の就活生は十一期生と呼ばれています。仮にここではそれを「R」と呼ぶことにします。
 
 10年続いているRですが、ここに来て問題が起こっています。毎年、現役4年生(つまり、就活生)が主役になり、一番熱心な学生がリーダーになって集いやイベントを開催するのですが、盛り上がりに欠けているというのです。リーダーが一人で一生懸命になっている状態です。以前は、集まりを企画すると数十人集まっていたのですが、今は数人しか集いません。
 1月6日の集まりは、そういった現状を踏まえて、「Rの存在意義ってなんだろう?」という問いを皆で考える会でした(結果は、「同志のつながり」として、無くてはならない存在であり、みんなでもっと盛り上げようということになりました)。

 かつては異常なほど盛り上がったRが、なぜ盛り下がってしまったのか。
 私は、R自体の問題以上の理由を感じずにはいられません。それは、ホテル業界人のみなさんの、「ホテリエとしてのアイデンティティ」や「ホテリエであることの誇り」、「ホテル業界への愛着」が薄まっているのではないかということです。
 かつて、私がホテル業界志望の学生支援を始めた1990年代後半から10年間は、ホテルマンは人気職業でした。バブル崩壊後でしたがホテル経営はまだまだ堅調で、現場も、厳しいながらホテルとしての誇りや矜持を持ちながら働いていました。
 ところがここ数年はどうか。職人的なサービスより効率や利益が優先されるようになりました。それで利益が増えて、お給料が増えればいいのですが、競争激化や不況によって、利益は減り、給料は減り、仕事量は増えています。

            「ホテリエってなんなんだ?!」

 こんな疑問を抱きつつ、どこを目指して働けばいいのかも定めることができずに、薄給に甘んじながら日々頑張っている・・・。そういう人ばかりではないでしょうか。

 震災から立ち直る元年である今年は、国の財政問題、税制改革、少子高齢化問題、ユーロ危機と円高などなど、問題山積です。真剣に社会構造や日本人の価値基準、ライフスタイルなどを見直す時期、リスタートするときに来ているのだと思います。
 ホテル業界においても、同様のことが言えるのではないでしょうか。
構造や意識を再設定するとき。人件費コントロールの手法を見直し、顧客満足至上主義、完璧主義を改め、マネジメント人材育成にシフトする。会社や組織を優先して個人の生活を犠牲にする価値観もなくしていき、社員を大事にする。そうやって、健全なホテル経営を実現していく。
 個々のホテル企業が健全なビジネスをすれば健全な業界になり、必ずやプロフェッショナルホテルマネジャーとしてのホテリエは、ステイタスのある職業に再びなるでしょう。

 余談ですが、少なくとも宿屋大学に集うホテリエの多くは、ホテルに深い愛着を抱き、ホテリエとしてのアイデンティティを持ち、ホテル業界を盛り上げたいと思っています。そして、集うことで、同志と切磋琢磨し、情報交換し、意識を高めています。
 そんな姿を見るにつけ、宿屋大学はホテルマネジメントのノウハウやスキルというコンテンツ提供という価値だけではなく、「ホテリエとしての誇りを感じる場所」という価値があると感じます。
 火を熾した炭というのは、単体だとすぐに火は消えてしまいますが、火がついた炭と炭を集めて置いておくと、さらにガンガン燃え上がる。集えばやる気が復活し、元気になる場所。宿屋大学は、そんな火鉢のような場所でありたい。

 そんな意識で今年も有益な講座を量産し、熱い集いを演出していきたいと思います。

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