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【11.12.20】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.26)
ビジネスの目的は完璧を目指すことですか
「コスト意識がこんなにも薄いとは思いませんでした。だって、新聞を毎日ごっそり捨てているんですよ。ほとんど依頼されないスポーツ新聞なんかも一式揃えておくからです。たまにしか依頼されない新聞なんて、頼まれてから下のコンビニに買に行けばいいんですよ」
ある地方都市の外資系高級ホテルでベルマンとして働く知り合いから、こんな話を聞きました。そして新入社員である彼が先輩に進言すると、「あなたは、そんなことを考えている暇、あるのかしら?」という答えが返ってきたそうです(この、思考停止促進&やる気ダウン促進ワードは、私としては耳にタコができるくらい聞いているので、「どのくらいの経費の無駄遣いをしているのかを数字で伝えなさい。そして不合理やムダをついて採りあってもらえずに凹むくらいなら言わない方がいい。言うのだったら覚悟を持って言いなさい」とアドバイスしました。しかし、なんでホテルの現場の多くは新しい意見に耳を傾けないのでしょうね・・・)。
同様なことを、あるホテル内レストランのスタッフからも聞きました。
「金曜日の夜にできないことは、どんなことでも、やらないように」という掟があるそうです。どういうことかというと、「どんなに忙しいときでも、できることしか、やってはいけない」というルールです。サービスにムラがあってはいけないという理由でしょうか。忙しいときにはやって差し上げられないという理由だけで、目の前にいるお客さまが望むことをして差し上げられるのに、それをしない、価値提供を放棄してしまうのは、不合理です。「この間はやってくれたのに、なんで今日はやってくれないの?」というコンプレインが恐いのなら、「いつもできることではないのですが・・・」と一言添えて、やって差し上げればいいのです。
フルサービス型のホテルでは、シフトを「満席対応ができるように組む」といいます。いま、マスコミでよく取り上げられているスーパーホテルは、必要最低限の人数でシフトを組んでいます。そして、人間にしかできない仕事を請け負い、それ以外をITがカバーするという仕組みを作っているのです。さらに、イレギュラーが起こったときにどう対応するかをつねに考えてマネジメントをしているといいます。
マネジメントとはそういうことだと思うのです。つまり、イレギュラー対応能力を仕組みで作ることこそマネジメントの目的です。
「お客さまにご迷惑をかけてはいけない。ホテルなんだから最上のサービスをつねに提供しなければならない」
フルサービスのホテルではみな、こんな固定概念が残っていると思います。このプロ意識、矜持の精神は日本人の美徳だし、日本のホテルのサービスレベルを維持する素晴らしい価値観だと思います。
しかし、ビジネスの目的は完璧を目指すことではなく、顧客価値を提供し続けてより大きな利益を残していくことです。完璧を目指すことで、どれだけ経費の無駄遣いをしているか、ぜひとも再考していただきたいです。
「無駄を省くこと(効率を目指すこと)」と、「最上のサービスを諦めること」は違います。顧客価値を最大の利益に変えていくことこそ、優れたホテルマネジメント、ホテルオペレーションなのです。