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【11.12.06】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.25)
2:3:5の提案
私が講師を勤めるホテル専門学校の生徒から、先日ちょっとつらい話を聞きました。
「人々の記憶に残るサービスをしていきたい」という思いでホテル就職を希望している彼女は、いま都内某シティホテルで実習をしています。とても忙しいホテルで業績も好調です。
あるとき、正社員の先輩に「ホテルに就職してよかったと思いますか?」と聞いたそうです。先輩はこう答えました。
「いや、後悔しているよ。月給、安すぎる。僕は実家から通っているからいいけれど、一人暮らししなければならない人は、生活できないだろうね」
この答えを聞いて、彼女はホテル就職を躊躇してしまったのです。そして、大手居酒屋チェーンのような外食企業の方が給与も待遇もいいから、そっちにしようかと考えるようになりました。
こんな話は今に始まったことではありませんが、熱い思いでホテル就職を考えてくれる大事なタマゴが業界に入ってこなくなるのは問題です。「給料が少ないんだったら、高くする努力をすればいいんだよ」と、精神論を言って聞かせましたが、現実問題はそう簡単ではないと思います。
ホテル業界のもう一つの課題。プロフェッショナルホテルマネジャーをどう育成していくかという問題です。プロのマネジャー育成の取り組みは、サービスの現場に喜びを感じている人たちとは、分ける必要があります。それなりの処遇を用意し、幹部候補生を採用し、幹部養成トラックによって育成する仕組みが必要です。
そして彼らの給与を高めるためには、全体をベースアップしていたら不可能です。全体をアップさせることができればそれに越したことはありませんが、労働集約型産業であるホテル業においては、現場でサービスをしている人の人件費がとっても大きなボリュームを占めているので、そこを圧縮すべき。つまり、現場でサービスをしている人たちのベースをダウンさせないといけないのです。
ようするに、米国であるような「労働力の二重構造」をつくる必要がある。ただし、米国にはチップ制度があり、サービスの人はそれで生活ができるが、日本ではそうはいかないという問題が残ります。
サービスに熱い思いを抱く人たちの生活を支えてあげることと、プロフェッショナルホテルマネジャーを育てていくこと。この二つがホテル業界の人材マネジメント上の大きな課題になっています。
今回、この二つを同時に解決できるかもしれないアイデアを思いつきました。
それは、「サービススタッフを二つに分ける」という方法です。
@社員としてのサービスマン
Aパートアルバイトとしてのサービスマン という二つに分けます。
@の人には、きちんと生活できる給与を払います。Aの人は、少ない給与となります。
そして、@の人の数を減らし、その代わり、ある程度のビジネス感覚を持って働いてもらいます。Aの人のボリュームを大幅に増やします。そして、ディズニーやマクドナルドが成功していますが、社員並みのモチベーションを高めて働いてもらう仕組みをつくるのです。
整理すると、
1 幹部候補生
2 正社員
3 パート・アルバイト(非正規社員)
という構成にし、その割合は、2:3:5くらいにする(現状は、「正社員8:パート・アルバイト2」くらいでしょうか)。
米国の「社員2:カジュアルレイバー8」という比率まではいかないまでも、大きな人件費の圧縮ができるはずです。圧縮した分を幹部候補生の給与をより魅力的にするための資金に充てるのです。
キモは、非正規社員を安定的に確保し、責任と権限を与えてモチベーションを維持しながら働いてもらう仕組みを作ること。子育てが一段落した女性、リタイアした高齢者、外国人、ホテル志望学生などから非正規社員を安定供給する仕組み、誰もがすぐに働けるようになるためのトレーニングシステムとマニュアルの整備をしていくことです。
どうでしょうか。今後、こんな感じの労働構成が機能するか、検証していきたいと思います。