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【11.11.08】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.23)
なぜホテルの労働時間は長いのか
先日、面白い調査結果を知りました。「Business Labor Trend」(2011年5月号)のなかで、厚労省の方が紹介していたものです。
「100点を目指して仕事をしている人は労働時間が長くなり、70〜79点を目指している人は逆に短い」。さらに、「長時間労働と脳・心臓疾患は比例する」という調査結果です。
つまり、「完璧を目指す人ほど、労働時間は長くなり、ひいては過労死する確率が高くなる」ということです。完璧主義の方、ご注意ください。(私は、「80点を3回採る労力と、100点を2回採る労力は同じ。合計点は前者の方が40点も高くなる」という考え方で仕事をしています。80点を100点に詰める労力や時間は非常に多くかかるため、仕事の出来は80点で良しとして次の仕事に移っていこうというスタンスです。良い悪いは別です)。
さて本題ですが、私はホテルの現場を見るにつけ、サービス残業が多く、休暇が少ないという厳しい労働環境に心を痛めます。なぜホテルの労働時間は長いのでしょうか。今回はこれを整理して考えてみたいと思います。
長時間労働には、4つの理由があります。
@「長時間労働は美徳」という価値観
A 業務の進め方・在り方が悪い(低い労働生産性)
B 職場管理の在り方が悪い
C 顧客との関係からくる問題
@「長時間労働は美徳」という価値観
あなたのホテルでは、長く働くことが美徳になっていませんか。有休を消化しないことが美徳になっていませんか。会社のために滅私奉公したいと思う気持ち、コミットメント度が高い、エンゲージメント度が高いということは、日本人の長所であることは間違いありませんが、会社もそれを当然と思ってしまっている部分が、ホテルには多い気がします。出勤時間の1〜2時間前に出社したり、サービス残業が恒常化しているといったことです。
また、「自分の仕事は終わったのに先輩が残っていたら帰宅できないと」いった雰囲気がないでしょうか。世間ではワークライフバランスが叫ばれているにもかかわらず、ホテルではいまだにこんな行きすぎた滅私奉公が残っています。サービス残業や、「自分のプライベートな時間を捧げる」ことが美徳とされる価値観を払しょくすべきです。
これが、ホテルの無駄の代表です。
それと、休暇の問題。有給休暇の日数が少ないうえに、きっちり取得することに罪悪感を抱く風潮があります(ちなみに、サラリーマン時代、私は100%取っていました。起業した今はほとんど休日がありませんが)。欧米では、有休は当たり前の権利として100%取得しています。日本人は100%有休を消化する人はたった19%だそうです。
休暇をとりやすくするためには、上司からの積極的な取得の奨励や上司の率先的休暇の取得、年間スケジュールを決めて年度の初めに予定を作っておくことなどが効果的です。
A業務の進め方・在り方が悪い(低い労働生産性)
いささかショッキングなデータがあります。
「日本の宿泊・飲食業の労働生産性は米国のそれの40%しかない」というものです。つまり、日本人が2.5人いて初めて米国人の一人前の仕事をしているということです。
一人ひとりの能力は、それほど変わらないでしょう。むしろ、日本人の方が真面目で一生懸命です。なのに労働生産性が低いということは、オペレーションのやり方やマネジメントのやり方が非効率で無駄があると言わざるをえません。「ムダを省く」、「業務の在り方を見直す」という観点で仕事を再考し、さらにそれぞれ物理的な施策と、既成概念などのマインドチェンジの施策の二つの方向性で変革していくことが求められます。
B職場管理の在り方が悪い
あなたの職場では、どれくらい権限委譲がなされていますか。
すべてをマネジャーが意思決定しなければ業務が進まないサービス組織ほど、パフォーマンスが悪いものはありません。サービスが鈍化し、マネジャーの労働時間は長くなります。「いま判断してくれれば、貴ホテルに決めるから」というお客さまからのリクエストを取り損ねます。
マネジメントは自己流や経験で行なうのではなく、「マネジャーの教科書」的な本がありますので、それらを参考にして管理手法を再構築してはいかがでしょうか。
いずれにしても、マネジャーが、「自分のチームをハイパフォーミング集団にしよう」という意識が大事でしょう。
C顧客との関係からくる問題
個人的には、これが最も大きな課題だと思っていますが、最も大きな足かせは、ホテル業界人が堅持する「顧客満足至上主義」です。以前、「日本のホテルは、顧客満足を達成するために、社員満足と利益を犠牲にしている」と述べましたが、「お客さまのためだったら残業もしょうがない」といった価値観を見直すべきではないでしょうか。
米国のホテルでは、チェックイン待ちのゲストがどれだけ列をつくっていようが、最少人数のフロントクラークで対応しています。すべてを米国にならって変えるべきとは言いませんが、社員満足や利益を考えたら、お客さまにホテルの都合を理解していただく努力も必要ではないでしょうか。
「ムダを省く」、「業務の在り方を見直す」という取り組みで、とても参考になる本が、先ごろ出版されました。『ホテルの経費節減実践テクニック100』(オータパブリケイションズ刊、堀口洋明著)。ホテルで予算を持つすべての人の必読書です。
http://www.ohtapub.co.jp/hbpt/hbpt100.html
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