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【11.10.25】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.22)
ホテル業界就職戦線、異常あり。
『ホテル業界就職ガイド』の2013年版は11月下旬発売予定
ここ1、2カ月の間、私はある書籍作成のために取材と執筆を繰り返していました。
『ホテル業界就職ガイド』です。
本書は、私が新卒でオータパブリケイションズに入社して、数年後に企画したもので、私の今の仕事の原点になった本です。当時、「HOTERES」の定期購読獲得のための営業をしていたのですが、あるホテルの専門学校の先生(駿台の加藤誠ホテル学科長、現・校長)と出会い、「ホテルの就職ガイドブック、お宅で作れない?」という声をいただき、それを具現化したのが発端でした。
簡単に「具現化した」なんて書きましたが、産みの苦しみは大変なものでした。オータパブリケイションズはずっとホテル業界をお客さまとして商売をしていたので「学生相手なんてビジネスになるわけがない」という社内の反対がありました。それを押し切って、企画書だけで2000部くらいの教科書採用を受注し、やっと出版企画のゴーが出たのでした。詰めの作業では3日間徹夜をしたり、一度刷ったものに誤植がたくさんあって、刷り直したり、ペーペーの私には困難を極めた船出でした。
そうして誕生したのが、1996年に出版した『1997年版 ホテル業界就職ガイド』です。いま創っている2013年版は17冊目になります。途中、私より有能なスタッフに企画・編集は託していたのですが、そのスタッフ(橋本由香さん)が、ホテル業界に戻ったために、取材・執筆の大部分の作業が私に戻ってきたというわけです。
18年前にこの本を作りだし、毎年、就職セミナーや合同会社説明会を開催してホテル志望の学生と出会い、彼らを応援してホテル業界に入ってもらい、その後も彼らと共に歩んできたというのが私の仕事人生の大半ですし、本書がなければ、宿屋大学を運営していることもなかったでしょうから、まさに本書は私の原点なのです。宿屋大学の経営もありますが、本書の作成は、私にとって貴重なライフワークなので、ありがたくやらせていただいています。
前置きが長くなりましたが、私が担当していた十数年前と比べて、ホテル業界就職戦線が、大きく変わっています。それはもう、驚くほどです。
まず、姉妹書の『ブライダル業界就職ガイド』が部数を伸ばし、今や同じくらい売れています。ホテルは減っています。数年前まで雲泥の差があったのに、今では同じくらい売れているようです。つまり、ホテル志望学生の数とブライダル志望学生の数はほぼ一緒になっているということです(市場規模はどちらも約1兆円ですからバランスがとれているのかもしれませんが)。
また、ホテル業界志望学生のなかに、「ホテル業界しか受けない」という学生が減っています。いわゆる「骨のあるやつ」も、減っています。いなくはありませんが、その数は激減しています。いい意味でも悪い意味でも、「優しい子」ばかりです。
さらに、人事担当者の話によると、「ちょっと前までは転職していく人の大半はほかのホテルに転職したが、いまは、他産業に行ってしまう。しかも、優秀な人から辞めていく」ということでした。
つまり、ホテル業界に「優秀な人材が入って来ず、優秀なホテルパーソンはどんどん去っていっている」、という傾向にあるのです。
なぜか? それは、職業としてのホテルパーソン、職場としてのホテルの魅力が薄れているからでしょう。これは、何とかしなければいけません。
それには、健全なビジネスをすることによって適正な利益を生み出し、適正な報酬を社員に支払っていくことです。そして、ホテルはいろんな仕事の集合体ですが、それらの仕事を担う人たちを正しく評価し、育成していく仕組みが必要なのです。
オーナーリレーションをする総支配人、一つのレストランをマネジメントする人、レベニュー・マネジメントをする人、ウエディング・プランナー、宴会サービスマネジャー、ドアマン、コンシェルジュなどなど、あなたのホテルには、「その人の代わりが効かない人」がたくさんいると思います。あなた自身もそういう人でしょう。誰でもできる仕事の賃金は安くてもいいと思いますが、その人にしかできない仕事をしている人財には処遇を厚くすべきなのです(ただし、処遇は「お金」だけではありません。まずは、認めてあげることが大事)。
そうやって、なくてはならない人が元気に輝きながら働く・・・。そういう業界にこそ、優秀人材は集まると思うのです。