【宿屋大学】雑学ノート「ホテル業を、よその業界の“付帯事業”から脱却させよう」

ホテル業を、よその業界の“付帯事業”から脱却させよう

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   ホテル運営企業として実力をますます伸ばす星野リゾートは、ホテルマネ
   ジャー育成に力を入れている。写真は、リゾナーレ八ヶ岳。ユニットディ
   レクターである宿泊支配人は、なんと26歳だった(本文とは無関係です)


 先日、ホテル人事担当者の方々と会食をしたときに、私はこんなことを話しました。
「日本のホテル業界においてプロのホテルマネジャーが育ちにくいのはなぜか。ファストトラック(幹部社員育成コース)の整備にも積極的ではないのはなぜか。それは、その必要がないというか、必要性を認識していないからなのかもしれませんね。なぜなら、日本のほとんどのホテルがチェーンの一ホテルか、大企業の子会社ゆえ、ローカルスタッフや子会社のスタッフを幹部にする必要がないからなのだと思います」
 そういうと、親会社が大手ゼネコンであるホテル企業の方が、大きくうなづきつつ、「そうなんです。いつまでたっても親会社からの出向社員が天下ってきて、幹部層に居座る。彼らは毎日新聞ばかり読んでいて、ろくな仕事をしない。その癖、口だけは出す。ホテルの現場を知らず、ホテルマネジメントの勉強もせず、現場スタッフやお客さまのことを理解しようともしない。負の存在です」とおしえて語ってくれました。横にいた電鉄系のホテル人事担当者も「うちも一緒ですよ」と言います。
 欧米では、ホテルマネジメントはプロフェッショナルな専門家がするものということが常識になっていますが、日本でそうなっていないのはなぜでしょう。親会社から来た出向組が、思い入れもなく、現場を理解しようとしなくても健全なホテル経営ができるとでも思っているのでしょうか。現場のスタッフはいつまでたっても低賃金で長時間労働していてもいいと思っているのでしょうか。
 もちろん、親会社から出向してきた方が、現場を理解し、応援してとても素晴らしいホテルマネジメントを実践している例もありますので、全員がそうではありません。
 それに、オーナーサイドの人にも言い分は大いにあります。「ホテル運営者は自己主張や言い訳ばかりして利益を出さない」、「不動産や金融のことをまるで分かっていない」などなど。
 正論を言えば、「ホテル親会社やオーナーと、ホテル運営者は、お互い尊敬しながらパートナーシップをとること」が、不動産業とサービス産業の合体ビジネスであるホテル業が、両者の二人三脚で成り立っているホテル業を健全なものにしてくれるのだと思います(立場やビジネスの目的が違うために矛盾をはらんでいるゆえ、所詮無理がありすぎるパートナーシップなのかもしれませんが、その議論はまた別の機会に)。
 お互い尊敬しあう関係。これができないのであれば、その理由はなんでしょう。

@上下関係ができている(対等という意識がない) 
A責任と権限が明確ではない 
B運営者が約束した責任を果たしていない 
C同じ言葉でビジネスができない(オーナーのホテルマネジメントへの理解不足と、運営者の不動産ビジネスへの理解不足)などが考えられます。

 こんな話をフェイスブックでしたら、あるベンチャーホテル企業の社長さんから、言い得て妙な一言をいただきました。

「ホテル業を早くよその業界の“付帯事業”から脱却させなければなりませんね」

 そのためには健全なホテル経営(長期的に適正な利益を出し続ける経営)ができるプロフェッショナルホテルマネジャーがいまの10倍くらい必要なのだと思っています。

 ホテル人事担当者のと会食の数日後、大学生の就職支援を長年している方とお会いして、「ここ数年で、ホテル志望の学生がものすごく減っています」というショッキングな話を聞きました。その理由は、出世が遅く給与が安いことが、学生にも知れ渡っているからだそうです。その方は、「ホテルの仕事をしたいのであれば、親会社に就職しなさい。オーナーの立場でホテルを管理する仕事に就くべきです」とアドバイスしているそうです。

「ホテル運営者が、若者が目指す憧れの仕事になる」
これを読んでくれているみなさんと一緒になんとか実現したいと切に思っています。

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