【11.08.16】「ホテルマネジメント雑学ノート」≪Vol.17≫

「一物一価の法則」と、単純労働提供型日本人の行く末

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 先日、私は講師を勤めるホテル専門学校の一年生の授業で、こんな話をしました。どうしても高校生気分が抜けきらず、勉強にも「やらされている」感をもっている学生が数人いるクラスの最終講義のときです。

「みんなも、卒業後はホテルで働くことになると思う。20歳で就職し、初任給が17万円くらい。大体20代後半で結婚します。DINKS(子供のいない共働きの夫婦)のうちは経済的に豊かです。ところが、子供ができるとどうなるか。ただ指示通りの仕事しかしない30歳男性ホテルマンの給与は額面で約25万円、手取りで22万くらいでしょう。でも、一世帯の月の出費は平均で約28万円かかるんです。6万円の赤字。生活できないよね。私は、このような状況になって『ホテルの仕事は好きだけれど、生活できないので、辞めます』といってホテル業界から去っていく人をたくさん見てきました。これはちょっと悲しすぎるよね」

 この後に、「仕事を、ただ言われたとおりにやるだけ」の人の給与はこれからも上がらず、マネジメントを学んでビジネスをしていくホテルパーソンの給与はどんどん上がっていくから、マネジメントに興味を持って勉強し、ホテル業界を牽引する人材になってほしいという話をしました。数人は、触発されて目つきが変ったようでした。

 人間には3つのタイプがあるように思います。

@自ら新しいビジネスや企画をクリエイトしていくタイプ
A指示を受けたら自身のプラスアルファをつけて期待の120%をやるタイプ
B指示通りのことをするタイプ

 新しい未来を創っていく人は、間違いなく@のタイプだし、指示を受ける人より指示を出す人の方が好きな仕事ができ、かつ収入が多くなるのは当然です。だから、人は@のタイプであるべきだと、私は考えてしまいがちなのですが、「いやいや、指示通りに現場で一生懸命サービスをしてくれる存在だってとても大事なんです」とか、「指示待ちタイプの人を@に矯正するのはほぼ無理です。適材適所を考えて、マネジメントすべき」という意見を述べる方もいて、それはそれで納得なのです。

 ただし、Bの人というのは、これからは本当に生き残れないと思います。
「一物一価の法則」という考え方があります。これは、「同じ市場の、同じ商品は、同じ価格で取引される」という法則です。今後、人材もグローバルマーケット化していくとすると、日本人よりもずっと安い賃金でも喜んで働いてくれる人が増え、単純労働の賃金がさらにデフレになってくるでしょう。経営者も「同じ労働の質であるなら安いほうがいい」でしょうから、そうなると単純労働しかできない日本人は居場所を失います。フォロワータイプの人は、少なくともAの仕事を提供する努力が必要です。@のタイプであるリーダーやマネジャーが増えてイノベーションを興したり、積極的なビジネス展開をしたりし、Aのタイプの優れたフォロワーが自身の仕事に磨きをかけていかない限り、日本のホテル業界は、いつまでたっても“産業”として成熟することはない気がします。

「ホテルの仕事は好きだけど、生活できないから辞めます」

 こんな悲劇を繰り返さないために、ホテル業界人はホテルマネジメントのクオリティを高める努力を続ける必要があると思うし、宿屋大学は、そのお手伝いを精一杯続けていきたいと思っています。





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