【11.07.03】「ホテルマネジメント雑学ノート」≪Vol.14≫

ビジネスホテルはビニール傘?!

脱「コモディティ化」の競争戦略

脱「コモディティ化」の競争戦略
価格:1,890円(税込、送料別)



「宿泊主体型ホテルの差別化って、どうしたらいいのだろうか」

 最近私はこればかり考えています。
 確かに、眠りを追及したり、朝食に力を入れたり、温泉大浴場を設置したりと、宿泊主体型ホテル、宿泊特化型ホテルのみなさんも、必死に「差別化」に取り組んでいます。しかし、結局、どれもまねされて、結局は差別化ではなく、均一化になっていっています。
 かと言って、セグメントを絞り込んだとしても難しそうです。
 例えば、「音楽好きの人たち向けのホテル」といった差別化戦略。確かに、とんがっています。差別化できます。しかし、こうしたトンガリを差別化につかう手法は、東京のような大きなマーケットボリュームがないとビジネスは成り立ちそうにありません。かつて、「remm(レム/http://www.remm.jp/)」を取材したとき、同様なこと(一定以上の大きさのマーケットボリュームがないと成り立たない)をおっしゃっていました。
 では、装置産業であるホテルが、差別化を図りビジネスを盛り上げていくためにはどうしたらいいのでしょうか。築40年のビジネスホテルが、新興ビジネスホテルチェーン群にとり囲まれたとき、マーケティング理論は機能するのでしょうか、それとも歯が立たないのでしょうか?
 最近、大学教授の方々とお会いする機会が多く、その中で出会ったあるマーケティングの教授氏に、同じような話をしたらとても示唆に富むアドバイスをいただきました。
「ビジネスホテルは、コモディティ商品(基本的な機能 --- 例えば清潔で安全で立地がいい--- さえあれば価格が安い方が選ばれる商品、つまりビニール傘のようなものです)なのです。ロイヤルティを抱きづらい商品なのです。エアラインは、これに気付いてマイレージサービスを始めました。顧客満足ではリピートしてくれないことに気付き、顧客満足だけに力を注ぐことを諦めたんです」
 コモディティ化に対抗するために顧客を囲い込むことが一つの対抗策ということですね。納得です。ただ、対抗策はこれしかないのでしょうか?
 そんな時、ある本に出合いました。

『脱「コモディティ化」の競争戦略』

 10年以上もコモディティ商品を研究している米国の教授が、30以上の業界を調査し、コモディティ化に陥る主要なパターンを分析し、それをどう回避するかを、実例を挙げて紹介した、優れた本です。
 主要なパターンは3つです。@安物化、A乱立、B加熱。これらのパターンに対し、ポジションを変えたり、価値を再定義したり、自社の強みを生かせるブルーオーシャンを見つけたり、顧客を動かしたりして対抗するのです。
 ぜひ、読んでみてください。わくわくします。IHGやヒルトン、マリオットがとった戦略など、ホテル企業の事例もふんだんに紹介されています。

 かつて、街にはいろんな商店や八百屋さんがたくさんありました。それが今では、ほとんどが有名チェーンのスーパーマーケットやコンビニエンスストアになっています。果たして、ホテル業界もそうなるのでしょうか。独立系のホテルは消えてなくなり、規模の経済の理論による大手ばかりが生き残っていくのでしょうか。
 個人的な感情を申し上げますと、ちょっとそういう未来は寂しいです。独立系ホテルのみなさん、頑張ってください。


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