【11.06.20】「ホテルマネジメント雑学ノート」≪Vol.13≫

顧客満足で満足してはならない

「お客さまが満足すれば、利益は後からついてくる」
 あなたは、これを信じていませんか。真摯に目の前のお客さまを喜ばせ、満足していただければ、ビジネスは自然と成り立つと・・・。
 ところが、米国では15年も前から「顧客満足と利益には相関がない」ということが学術論文で発表されて、これが常識になっているのです。
 つまり、どれだけお客さまを満足させたところで、売り上げが高まることはないというのです。
「社員が満足し、社員が元気でハッピーでいたら、お客さまを満足させることができる」。これは、学術的にも証明されているそうです。「社員満足」と「顧客満足」には、相関があるのです。
 ところが、「顧客満足」と「利益」には、相関がない。
 では、どうすればいいか。
 それは、顧客満足で満足しないで、それを「顧客ロイヤルティ」に昇華させていくことが鍵になっているのです。
「顧客ロイヤルティ」とはなにか。それはつまり「ファン」になってもらうことです。そのホテルやレストランのファンになってもらい、リピートしていただいたり、口コミでほかのお客さまに知らせて新たなお客さまを呼びこんでいただいたりしてくれる「ファン」になってもらうのです。ファンになれば、価格や立地といった魅力でほかのホテルが自ホテルよりも勝っても浮気しないのです。

 では、「顧客ロイヤルティ」を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。そこが問題です。
 我が国のホテル業界では、この「どうしたら顧客ロイヤルティを高めることができるのか」の研究が未熟なのではないでしょうか(すいません、私の勉強不足だったら、教えてください)。
 私は、その方向性は「感動」「承認」「パーソナル」の3つに集約されると考えています。

≪感動≫
 人はモノやサービスを消費する際、期待値と実際がイコールである場合、満足します。期待値よりも実際が下回ったら不満を感じます。そして、期待以上だった場合、それは「感動」になるのです。満足を超えて「感動」していただくことをすればそのお客さまはファンになってくれるのです。
 ただ、「感動を与えよう」というと、「ちょっと大変そう」と思いがちですが、大きなサプライズをドカンとやるのではなく、「小さな感動を連打する」というスタンスでいると取り組みやすいのではないでしょうか。

≪承認≫
 アマンリゾーツのホテルに行くと、数百人いるスタッフ全員がゲストを名前で呼びます。なぜ全員が自分の顔と名前を覚えているのか不思議なくらいですが、そうすることによってゲストは嬉しいし、ちょっと感動するのです。
 また、ゲストから要望があった場合、それを真摯に検討して対応結果を伝えることも大事です。ゲストの要望通りのことができたらそのゲストは嬉しいのは当然ですし、「自分の意見で、このホテルはこういうサービスを導入したんだよ」と知り合いに触れて回るでしょう。ソーシャルメディアで広めるかもしれません。

≪パーソナル≫
 これは、「承認」と同じ方向かもしれませんが、何度かお会いしたことのあるゲストに対して、「○○様、おかえりなさいませ」「○○様、今日は、前回気にいっていただいたお席をリザーブしておきました」と伝えるだけで特別感を感じます。ほかのゲストとは違い、自分は常連なんだ、このホテルでは大切にされているんだと感じ、嬉しくなります。

 お金や立地、ハードの素晴らしさでは、確かに満足させることはできますが、上記の3つというのは、やはり「人的サービス」のなせる技なのです。装置産業であるホテルはリピートされなければビジネスは難しくなり、リピーターは人にしかつくれないのです。

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