【11.05.23】ホテルマネジメント雑学ノート(Vol.11)

社員を犠牲にした利益なんて・・・



 「Great Place to Work(R)」という企業(http://www.hatarakigai.info/)をご存知でしょうか。世界44カ国で「働きがいのある会社」を同じものさしで調査分析し、ランキングしている会社です。ホスピタリティ系企業では株式会社Plan・Do・Seeが上位にランキングされています。
     
 働きがいとは何でしょうか。
 同社の指標は、大きく分けて、@信頼 A誇り B連帯感の3つだそうです。そして、「信頼」のなかには、信用・尊敬・公正とありました。
 驚くべきは「尊敬」という指標です。意外でした。てっきり「社員が経営者をどれだけ尊敬しているか」という指標だと思ったのですが、実は逆で、「経営者が、どれだけ社員を尊敬しているか、パートナーとして大事に接しているか」の指標だそうです。
 企業経営にはいろいろなステークホルダーが関係していますが、個人的には、顧客の次に大切にすべきなのが「社員」だと思っていますので、この「尊敬」という指標の意味を知った時、私は大いに腑に落ちる思いをしました。
 CS(顧客満足)、ES(社員満足)、プロフィット(利益)。この3つをバランスよく高めることが経営者の役割であると考えますが、その順番は、@CS、AES、Bプロフィットだと認識しています。経営者(オーナー)が受け取るべき利益というのは、CSとESを達成した後に残すものであって、どれだけ残すかが経営者、商売人の力量だと思うのです。つまり、CSもESも達成させないで利益を優先させる行為は、詐欺であり搾取なのではないでしょうか。

 残念な話を聞きました。
 震災で大打撃を受けたあるホテルが、4月の社員給与を一律大幅にカットしたという話です。それは10%とか20%とかいうレベルではなく、蓄えがなかったり、ローンの返済を毎月している方にとっては死活問題になるレベルの大幅カットです。
 これなどは、企業利益を社員満足よりも優先させている例です。震災前まではきちんと稼いでいたホテルです。蓄えだってあるはずです。銀行だってお金を貸してくれるでしょう。それなのに、社員の生活を犠牲にしてしまうのは、企業の存在意義として本末転倒というか、順番が違うと思うのです。
 社員の給与に手をつけるのは、いよいよ会社が立ち行かなくなり、銀行もお金を貸してくれない状況になり、倒産の危機に瀕した最終段階であるべきではないでしょうか。

 冒頭で紹介した「社員をどれだけ尊敬しているか」という指標からしたらゼロポイントという回答になるでしょう。
 こんなことを続けていたら、日本のホテル業界に、本当に人が来なくなります。
 私は、いまある大学の観光学部で講師を担当していますが、ホテル志望学生の少なさに驚きます。「ホテルを志望していましたが、いろいろ研究していくうちに志望を取り止めました」という人も多いのです。

 あまりに悲しかったのでついつい感情的に書き連ねてしまいました。
「経営者のつらさを知ならいくせして、えらそうなことを言うな」という反発も聞こえてきそうです。でも、私の父は零細企業ではありますが、私が6歳のころから会社経営をしていましたし、私自身も小さいながら一応経営者です。雑誌記者として経営者の取材も15年間してきました。

 その経験から、あえて言います。
 「社員を大切にしている企業だけが、健全経営を続けられる」のです。

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